Research Abstract |
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマは,二枚貝を生物群特異的に斃死させる赤潮プランクトンである。このプランクトンをIwasaki II培地で大量培養した。培養したプランクトンは,その藻体を遠心分離で集めた。これを1-ブタノールで抽出した。得られた粗抽出物は,酢酸エチル可溶部と水可溶部に分画した。 二枚貝斃死物質を単離するため,カキの心臓から調製した細胞に対する致死および溶解活性を指標とし,酢酸エチル可溶部の分画を行なった。シリカゲルカラムクロマトを用いて分画した結果,糖脂質画分に細胞溶解活性が認められた。そこで,この画分を逆相シリカゲルカラムクロマトおよび逆相HPLCによる精製を行なった。その結果,1種の新規糖脂質を含む3種の糖脂質を単離した。 新規糖脂質化合物は、高分解能FAB-MSスペクトルから分子式C_<51>H_<78>O_<15>であった。さらに各種NMRスペクトルを解析することによって,グリセリンに2種の脂肪酸および6-ο-(α-galactopyranosyl)-β-galactopyranosideが結合した構造であった。脂肪酸はGC-MSで分析するとともに,糖部分は比旋光度から、その構造を(2'S)-2'-ο-(6,9,12,15-octadecatetraenoyl)-3'-ο-(3,6,9,12,15-octadecapentaenoyl)glyceryl 6-ο-(α-D-galactopyranosyl)-β-D-galactopyranosideと決定した。 他の2種の糖脂質化合物は,それぞれ(2'S)-2',3'-di-ο-(3,6,9,12,15-octadecapentaenoyl)glyceryl β-D-galactopyranosideおよび(2'S)-2'-ο-(6,9,12,15-octadecatetraenoyl)-3'-ο-(3,6,9,12,15-octadecapentaenoyl)glycerylβ-D-galactopyranosideと同定した。 これら3種の糖脂質化合物はいずれも濃度0.13mg/mLでカキの心臓細胞に対して溶解活性を示した。
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