2001 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚発声系の可塑性を研究する哺乳動物モデルの確立:ハダカデバネズミの音声と脳
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13035006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岡ノ谷 一夫 千葉大学, 文学部, 助教授 (30211121)
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Keywords | ハダカデバネズミ / Soft chirp / 鳴き交わし / チャープ間間隔 / 音声可塑性 / 音声学習 / 真社会制 / 中脳水道灰白質 |
Research Abstract |
哺乳類では数少ない真社会制動物であるハダカデバネズミは、女王を中心とした社会を作り、数多くの発声レパートリーを持つことが知られている。ヒト以外の哺乳類は、発声行動の可塑性が限定されており、音声学習の動物モデルとして用いることができる動物がいない。我々は、ハダカデバネズミが音声可塑性を持つのではないかと考え、この動物を30匹アフリカから輸入して、研究室内で飼育しはじめた。 アクリルで自然環境を模したトンネルシステムを作り、デバネズミのコロニーをこの中で飼育しはじめると、半年ほどで繁殖に成功した。これは日本で初のハダカデバネズミの繁殖の成功記録である。この環境で、様々な音声を記録し、特にソフトチャープという音声が興味深いことがわかった。ソフトチャープは個体どうしがトンネル内ですれちがうとき発せられる音声である。この音声を3つの異なるコロニーについて記録してみると、明瞭な個体差があることがわかった。彼らがこの個体差を実際に使用しているかどうかは不明である。 さらに、ソフトチャープを複数個体で鳴くときの時間間隔を測定し、1個体で鳴いているときのそれと比較すると、前者のほうが有意に短いことがわかった。すなわち、ハダカデバネズミはソフトチャープにより鳴き交わしをしているのである。 個体数が増加し飼育が安定するまでは、神経科学的な研究に踏み込めないが、病気になった個体を解剖し、脳をチトクロム酸化酵素で処理した結果、中脳水道灰白室と下丘の活性が高かった。この動物の音声コミュニケーションが発達していることと対応している。
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