2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13035013
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
黒柳 秀人 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (30323702)
|
Keywords | 遺伝子 / 解剖学 / ゲノム / 神経科学 / 脳・神経 / シナプス |
Research Abstract |
近年、シナプスの形態と機能分子局在がシナプス機能を制御しさらには神経回路の機能自体を調節していることを示唆するデータが報告されているが、シナプス形態や機能分子動態と神経回路網の調節を個体レベルで解析することは脊椎動物の脳神経系では難しい。そこで我々は線虫(C. elegans)をモデル生物として、シナプスタンパク質をGFP融合タンパク質の発現によって可視化し、その動態を生体内で観察することで、シナプス動態を個体レベルで解析することを試みた。 1)Non-NMDA型グルタミン酸受容体チャネルGLR-1の動態解析。GLR-1とGFPとの融合タンパク質を発現するトランスジェニック線虫を作製した。GLR-1-GFP融合タンパク質はGLR-1の欠失変異体をレスキューでき、頭部の神経環および腹側神経索にクラスターを形成することを確認した。このGLR-1-GFPの生体内での動態を2光子レーザー走査顕微鏡を用いて観察し、神経突起内のGLR-1-GFPクラスターは数分から1時間程度の短時間の観察では比較的安定で位置や大きさが変化しないこと、一方、同一個体の4齢(最終)幼虫期と成虫期の比較から、成長に伴って間隔が広がった腹側神経索のクラスターの間に新たなクラスターが生じることが観察された。 2)線虫の新規シナプスタンパク質の探索。線虫のシナプスを可視化し、シナプス形成や維持の分子機構を解析するために、哺乳類の11種類のシナプス後部タンパク質および類似タンパク質の相同遺伝子を線虫のゼノムから探索した。そのうち、7種類については、相同遺伝子(8個)を同定し、cDNAのクローニングとプロモーター解析、およびGFP融合タンパク質の局在の解析を行い、遺伝子破壊株の作製を行った。 線虫の特定の神経細胞に形成されるシナプス構造の発生過程における変化およびシナプス構造変化と線虫行動の関係を明らかにするための手法として、シナプスタンパク質とGFPの融合タンパク質の生体内での動態観察は有効なアプローチであると考えられる。さらに、将来的には、遺伝的因子と後天的因子(学習・経験)の相互作用によってシナプス形成再構築の過程がどのように制御されているのかを明らかにしたい。
|