2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13035025
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水関 健司 理化学研究所, 細胞分化・器官発生研究グループ, 研究員 (80344448)
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Keywords | 神経変性疾患 / パーキンソン病 / 細胞移植治療 / ES細胞 / 霊長類 / SDIA / ドーパミン神経 / 網膜色素上皮細胞 |
Research Abstract |
パーキンソン病などの神経変性疾患に対する細胞移植治療では、移植材料の確保が避けて通れない問題である。この問題を解決するために、ES細胞から神経細胞を試験管内で効率よく誘導することが望まれている。 我々は共培養系を用いて、いくつかの間質細胞にマウスES細胞から神経分化を促進する活性(SDIA, stromal cell-derived inducing activity)があり、中でも頭蓋骨由来の間質細胞であるPA6細胞は高率(90%以上)に神経細胞を誘導し、その30%をドーパミン神経へと分化させることを見いだしていた。本研究ではSDIAの分子同定を試みたが、現在のところ明確な結論に至っていない。 そこで神経系再生医学の技術基盤を確立することを目的として、SDIA法により霊長類のES細胞からも神経細胞が誘導できるかを検討した。カニクイザルのES細胞をPA6細胞と2週間共培養した結果、97%のコロニーが凡神経マーカーNCAM陽性であった。細胞レベルでは45%の細胞がNCAM陽性、25%が成熟神経マーカーのTuJ陽性であり、SDIA法により霊長類のES細胞からも効率良く神経細胞が誘導されることがわかった。またドーパミン神経のマーカーであるTH(tyrosine hydroxylase)が80%のコロニーで陽性であり、細胞レベルでは35%の成熟神経がTH陽性であった。さらに高カリウム刺激により培養液中にドーパミンの放出がHPLC法により検出されたことから、機能的なドーパミン神経が効率良く誘導されることがわかった。 興味深いことに、SDIA法で3週間の共培養後、8%のコロニーにサルのES細胞から網膜色素上皮細胞も誘導されることがわかった。網膜色素上皮細胞は網膜色素変性症の病変部位であり、将来的な細胞移植治療にSDIA法が応用されることが期待される。
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Research Products
(1 results)