2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリックス形成分子により電子移動を制御したレドックス系の開発
Project/Area Number |
13128204
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 俊作 京都大学, 工学研究科, 教授 (80150324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉野目 道紀 京都大学, 工学研究科, 助教授 (60252483)
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Keywords | ヘリックスペプチド / フェロセン / 自己組織化膜 / ダイポールモーメント / 長距離電子移動 / ホッピング機構 |
Research Abstract |
本年度は、レドックス活性なフェロセン(Fc)部位を有するα-ヘリックスペプチドから、金基板上に自己組織化膜(self-assembled monolayer ; SAM)を調製し、分子膜を介して起こる電子移動反応をヘリックスのダイポールモーメントにより制御できることを見出した。ロイシンとα-アミノイソ酪酸との交互配列16量体ペプチドのN末端にFc部位、C末端にジスルフィド基を有するペプチド化合物FcL16SSと、ペプチド鎖に対して官能基の配置が逆であるSSL16Fc、それぞれのペプチド化合物に対してFc部位のない参照化合物BL16SS、SSL16Bを合成した。合成したペプチド化合物のエタノール溶液中に、金基板を浸漬することにより調製したそれぞれのSAMについて、赤外反射吸収スペクトル測定を行った結果、いずれの膜においてもヘリックス軸は基板に対してほぼ垂直に配向していることがわかった。1M HClO_4水溶液中のサイクリックボルタンメトリーでは、Fc部位を有するSAMにおいてのみFc部位の酸化還元ピークが観測され、Fc部位から金表面への長距離電子移動(約4nm)がペプチド膜を介して起こることが示された。その酸化還元電位は、FcL16SS SAMとSSL16Fc SAMにおいてほとんど同じであったことから(0.63-0.64 V vs. Ag/AgCl)、Fc部位は水相近くに存在しペプチド末端の部分電荷の影響を受けていないことが示唆された。同条件下でのクロノアンペロメトリーより、FcL16SS、SSL16Fc SAMにおける標準電子移動速度定数はそれぞれ、0.68s^<-1>、2.00s^<-1>と求められ、SSL16Fc SAMではダイポールモーメントが電子移動を促進していることがわかった。また、電子移動速度定数に電位依存性がほとんど見られなかったことから、この長距離電子移動は通常の超交換作用による電子トンネリングではなく、ホッピング機構により起こっていることが明らかとなった。
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