Research Abstract |
申請者は,これまでに不斉リン原子を有する核酸類縁体の立体選択的な新規合成手法(オキサザホスホリジン法)の開発を行ってきた。平成16年度は,これまでの方法をさらに改良し,ホスホロチオエート型DNAの立体選択的合成反応に関しては,収率,立体選択性に関して当初の目標を達成することができ,十分実用性の高い方法論を確立することができた。この方法をホスホロチオエートRNAの立体選択的合成に適用したところ,DNA類縁体の場合と同様に,モノマー合成と2量体の液相合成においてほぼ完全な立体選択性が実現できた。今後,固相合成によるリン原子の立体が制御されたホスホロチオエートRNAの合成を検討する予定である。特に,立体が制御されたホスホロチオエートRNAは,現在,遺伝子発現制御法として最も注目されているRNAiの基質として極めて有望である。 一方,申請者は,新しいタイプのリン原子修飾核酸として有望視されているボラノホスフェート層DNAの新規合成法を確立することにも成功した。これまでボラノホスフェートDNAは,合成上の制約からチミジル酸誘導体しか合成例のなかったが,本研究によってはじめて4種類の核酸塩基を含むオリゴマーの固相合成に成功した。さらに,相補的な塩基配列を有するDNAおよびRNAとの二重鎖形成能を評価したところ,DNAよりもRNA相補鎖とより安定な二重鎖を形成することを明らかにした。12量体の場合,ボラノホスフェートDNA・RNA二重鎖は生理的条件下で45℃以上のTm値を示したことから,今後,アンチセンス核酸としての利用が大いに期待できる。
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