Research Abstract |
H^+ポンプピロホスファターゼ(H^+-PPase)は80kDaの単一ポリペプチドで構成され,光合成細菌と植物に加え,原生動物,細菌,古細菌にも分布する。H^+-PPaseの高次構造,反応共役機構,生理機能の解明を課題としている。次の点を明らかにした。 (1)大腸菌発現系の応用可能な放線菌H^+-PPase(794aa)を対象とし,膜トポロジーを決定した。すなわち,17回膜貫通領域をもち,活性ドメインを形成する親水性ループが細胞質側に露出していることを実証した。植物酵素は16回膜貫通であることも提案した。 (2)放線菌H^+-PPaseを解析し,液胞膜H^+-PPaseと異なり活性発現にK^+が不要であること,高温安定であること,放線菌の細胞膜に局在することを明らかにした。また,酸化還元による活性調節の可能性も見出した。 (3)結晶化条件の新しい方法として,活性型H^+-PPaseのみを認識するモノクローナル抗体を調製し,Fabフラグメントを大腸菌で合成するシステムを確立し,この抗体を用いて酵素精製が可能となった。現在スケールアップに取組んでいる。 (4)シロイヌズナでのH^+-PPase遺伝子欠損株は,特定環境下では生長が著しく低下することを見出し,生理的な重要性を証明した。その変異株におけるV-ATPaseの活性上昇も見出した。 植物の液胞膜には,上記H^+-PPaseとV-ATPaseが形成するH^+濃度勾配を駆動力とするCa^<2+>/H^+交換輸送体が存在する。イネのCa^<2+>/H^+交換輸送体(OsCAX1a)の分子構造,基質特異性,生理機能の解析を進めている。基質認識に関与するアミノ酸を特定した。OsCAX1はCa^<2+>蓄積機能の高い細胞で特異的に高発現していることも明らかにした。
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