2005 Fiscal Year Annual Research Report
アンチポーター型有機物質排出トランスポーターのナノ構造と作動機構
Project/Area Number |
13142205
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 明人 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60114336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 聡 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (30300966)
平田 隆弘 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (90333450)
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Keywords | 異物排出タンパク / 結晶構造 / 多剤排出タンパク / AcrB / フェニルアラニンクラスタ / 基質結合型結晶 |
Research Abstract |
本研究は、それまで全く構造決定の成されていなかった、異物排出トランスポーターのX線結晶構造を決定し、構造に基づいて異物認識機構と排出輸送機構を解明するという目的を持って企画された。開始後1年で、世界初の異物排出トランスポーター構造として、大腸菌主要異物排出タンパクAcrBの構造決定に成功し、異物の認識が細胞質膜脂質二重層からの異物取り込みによるものであることが構造的に証明された。この最初の構造は基質を結合しておらず、基質認識部位の特定ができなかった。本年、本研究最終年度に成功した。それまでの予想を覆し、3量体中央のcentral cavityにではなく、各モノマー内部のフエニルクラスター領域に結合していた。基質は3量体の一つにだけ結合していた。一般に、結晶構造はある特定の反応段階のスナップショットに過ぎないという弱点を持つ。ところが、驚くべき事に、私たちの決定した基質結合型3量体の構造は、それぞれのモノマーが排出輸送反応の3段階にそれぞれ対応していた。一個の結晶構造で、3つの中間体の構造を解いたこととイコールの成果が得られたわけである。その結果、基質の輸送経路についてはほぼ完全な理解が可能となった。すなわち、まず、基質結合段階では、細胞質膜表層に開いた側面の開口部からフエニルクラスターまでチャネルが開通しており、そのチャネルの一番奥に基質である薬剤が結合していた。結合部位からの出口は、隣のモノマーから倒れ込んできた中央ヘリックスによりふさがれていた。3本の中央ヘリックスのうち1本が隣のモノマーに対して倒れ込む構造を取っていたのである。一方、中央ヘリックスが倒れているモノマーは、基質結合部位からの出口が開口し、逆に入り口からのチャネルが閉じていた。また、基質結合部位自体も、あたかも基質を絞り出すかのように縮小していた。これは、基質を遊離させた直後の状態を反映していると考えられる。第3のモノマーは、両者の遷移状態を示していた。すなわち、基質は3つのモノマーが順番に基質を結合し輸送するbinding change機構により輸送されることが明らかとなった。
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Research Products
(6 results)