2001 Fiscal Year Annual Research Report
アブラナ科植物の自家不和合性遺伝子群の多様性の分子機構
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13206052
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
柴 博史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (20294283)
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Keywords | 自家不和合性 / 優劣性 / S-locus protein 11(SP11) / class-II / Brassica rapa / Brassica oleracea |
Research Abstract |
アブラナ科植物の自家不和合性に関わる雌雄のS因子としてSLG, SRKおよびSP11が明らかにされているが、これらをコードする遺伝子はMHC遺伝子座に匹敵する高度な多型を示す。S遺伝子の多型形成機構を明らかにするため、比較的S遺伝子が保存されている複数の花粉劣性系統(class-II系統)のS遺伝子座の解析と系統間におけるS遺伝子座の比較を計画した。本年度は、まずclass-II 1系統のS遺伝子座を解析し、未だ明らかでないclass-II系統の花粉側因子SP11の探索を行った。花粉劣性を示すBrassica rapa S_<60>ホモ系統株のファージゲノムライブラリーから、SRKを含むクローンを単離し、このクローンを起点にしてゲノムウォーキングを行ったところ、SRKの上流6.5kbにSP11と同様に複数のシステイン残基をコードしていると予想されるゲノム領域を見出した。当該配列を基にプライマーを作製し、葯cDNAを用いたRT-PCRを行ったところ発現が認められたため、これをS_<60>-SP11とした。S_<60>-SP11は発現タンパク質を用いた受粉実験の結果からS遺伝子特異的に不和合反応を誘起したため、class-I SP11の対立遺伝子と断定した。S_<60>-SP11を基に他のclass-II 5系統からSP11を単離したところ、系統間の相同性はclass-I系統間でのSP11の相同性と比較して高かった(アミノ酸配列レベルで61-91%,class-I系統間では38-45%)。またclass-I SP11とはアミノ酸配列レベルで25-31%の相同性しかなかったことからclass-I SP11とclass-II SP11は極早い時期に分化したものと推察される。さらにclass-I/class-IIヘテロ体ではclass-II SP11の発現が抑制されていたことから花粉劣性の形質がclass-II SP11の転写レベルでの発現抑制によって決まることを明らかにした。
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[Publications] Hiroshi Shiba et al.: "The Dominance of Alleles Controlling Self-Incompatibility in Brassica Pollen Is Regulated at the RNA Level"Plant Cell. 14・2. 491-504 (2002)
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[Publications] Hiroshi Shiba et al.: "A pollen coat protein, SP11/SCR, determines the pollen S-specificity in the self-incompatibility of Brassica"Plant physiology. 125. 2095-2103 (2001)
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[Publications] Hiroshi Shiba et al.: "Characterization of Expressed Genes in the SLL2 Region of Self-Compatible Arabidopsis thaliana"DNA Research. 8. 205-213 (2001)
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[Publications] 柴 博史: "植物の自家不和合性の謎が解けた!自己・非自己の識別の妙味"化学同人. 6 (2001)