2001 Fiscal Year Annual Research Report
脳の発達におけるグルタミン酸トランスポーターの役割
Project/Area Number |
13210044
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 光一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80171750)
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Keywords | 神経科学 / 脳神経 / 発生・分化 / グルタミン酸 / 欠損マウス |
Research Abstract |
成人の脳において主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸は、シナプスが形成される以前の発生初期の脳では神経幹細胞の増殖、神経細胞の移動・生存、神経突起の伸長など脳の発達の様々な局面に関与する細胞間相互作用因子の一つと考えられている。しかし、従来の仕事はin vitroの研究ばかりで、in vivoでグルタミン酸が脳の発生にどのように関与していかどうかの実験的根拠は乏しい。グルタミン酸トランスポーターは、細胞外グルタミン酸濃度を制御する最も重要な機能分子である。本研究では、グルタミン酸トランスポーター欠損マウスの中枢神経系の形成異常を詳細に解析し、中枢神経系形成におけるグルタミン酸トランスポーターの役割を明らかにする。グリア型グルタミン酸トランスポーターを全く持たないマウス(GLAST/GLT1欠損マウス)は、GLASTヘテロ/GLT1ヘテロ(GLAST^<+/->/GLT1^<+/->)同士の交配でしか維持できない。従って、GLAST/GLT1欠損マウスを解析するためには、多くのGLAST^<+/->/GLT1^<+/->の交配用ペアが必要である。本年度は、マウスの飼育場所を確保し、80ペアのGLAST^<+/->/GLT1^<+/->の交配用ペアを繁殖させ、詳細な表現型の解析を開始したところである。また、GLASTが神経幹細胞のマーカーとなること明らかにした。GLASTは、従来の神経幹細胞のマーカー分子と違い、膜蛋白質であり、神経幹細胞の単離などに応用できる細胞表面マーカーと成り得る。本年度は、GLASTの細胞外部位を認識する、特異性の高い抗体の作成に成功した。現在、この抗体がGLAST発現細胞の単離に使用可能かどうか検討中である。またGLT1は、細胞外グルタミン酸濃度を制御することにより、海馬における長期増強の発現にとって重要な分子であることを明らかにした。
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[Publications] Katagiri, H.: "Requirement of appropriate glutamate concentration in the synaptic cleft For hippocampal LTP induction"European Journal of Neuroscienec. 14. 547-553 (2001)
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[Publications] Sugiyama, T.: "Inhibition of glutamate transporter by theanine enhances the therapeutic efficacy of doxorubicin"Toxicology Letter. 121. 89-96 (2001)
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[Publications] Gray, C.: "Glutamate does not play a major role in controlling bone growth"Journal of Bone and Mineral Research. 16. 742-749 (2001)
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[Publications] Nishizaki, T.: "A new neuromodulator pathway with a glial contribution mediated via A_<2a> adrenergic receptors"Glia. (印刷中).