2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13216022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千田 和広 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00192188)
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Keywords | 発がん / 上皮組織 / 過形成 / PKC / シグナル伝達 / プロモーション / 突然変異 / DNA修復 |
Research Abstract |
ヒト発がんの主要標的である上皮細織の細胞増殖や分化の制御機構を知ることは、がんの発生の理解に重要である。上皮組織での過剰な細胞増殖による過形成は腫瘍と似た形態を示し、がん好発部位に一般的に認められるだけでなく、炎症、創傷治癒や化学物質の暴露等で惹起される。多くの動物実験で、がんを誘発する化学物質やがん化を促進する因子に正常組織の過形成誘導作用がみとめられている。過形成とがん化シグナル伝達との関連を動物個体と細胞レベルで明らかにする。ホルボールエステル発がんプロモーターの標的分子であるプロテインキナーゼC(PKC)の中で、上皮基底層で発現が高いPKCα、分化した細胞で発現するPKCη、さらに全層で発現するPKCζに注目し、遺伝子破壊マウスを用いて過形成誘導とがん化の機構について検討した。PKCα遺伝子破壊マウスホモ型では、ホルボールエステル処理や創傷治癒による再上皮化で表皮過形成が顕著に低下した。皮膚二段階発がん実験で腫瘍が高頻度に発生した。しかし発がん物質の連続投与でもホモ型の腫瘍発生は高かった。いずれの腫瘍も乳頭腫であった。マウス胎児繊維芽細胞を用いて突然変異率を調べたところ、PKCαの欠失が有意に変異を起こしやすくなっていた。PKCαがミスマッチDNA修復に関与する可能性が考えられた。PKCηは表皮過形成と腫瘍発生に抑制的に働く。新たに三次元培養法を確立し、PKCη欠損角化細胞の過形成異常を再現した。上皮の重層化にはIL-1β、KGF-1およびKGF-2の重要性が示された。しかし、PKCζは表皮過形成には関与しなかった。PKC分子種間で上皮組織の増殖制御に役割のあることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Hirai, T., Niino, Y.S., Chida, K.: "PKCζII, a small molecule of protein kinase Cζ, specifically expressed in the mouse brain."Neurosci.Left.. 348. 151-154 (2003)
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[Publications] Chida, K., Hara, T., Hirai, T., Konishi, C., Nakamura, K., Nakano, K., Aiba, A., Katsuki, M., Kuroki, T.: "Disruption of PKCη results in impairement of wound healing and enhancement of tumor formation in mouse skin carcinogenesis."Cancer Res.. 63. 2404-2408 (2003)
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[Publications] Tobe, K., Asai, S., Matuoka, K., Yamamoto, T., Chida, K., Kaburagi, Y., Akanuma, Y., Kuroki, T., Takenawa, T., Kimura, S., Nagai, R., Kadowaki, T.: "Cytoskeletal reorganization induced by insulin : involvement of Grb2/ Ash, Ras and phosphatidylinositol 3-kinase signalling."Genes Cells. 8. 29-40 (2003)
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[Publications] Hiral, T., Chida, K.: "Protein kinase Cζ(PKCζ): activation mechanisms and cellular functions."J.Biochem.. 133. 1-7 (2003)