2002 Fiscal Year Annual Research Report
d-およびf-電子を含むIV族ナノクラスタ磁性物質の合成と物性
Project/Area Number |
13304031
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
谷垣 勝己 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60305612)
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Keywords | IV族元素 / ナノクラスタ / 磁性 / d-電子 / f-電子 / 遷移金属 / 超伝導 / 電子相関 |
Research Abstract |
本研究は、IV族元素(C, Si, Ge, Sn)の多面体クラスタを基本とする固体において、クラスタ結晶格子の特異サイトあるいはクラスタの内部空間に他元素を高精度で配置したナノ物質の合成方法ならびに物性研究に関するものである。研究の目的は、クラスタネットワークに広がる伝導電子とナノ空間を利用して高度に制御された配置を有する磁性元素との間に生み出される特異な相互作用系の新磁性ナノ物質の創生とその電子物性の基礎的な解明であり、応用としては次世代の新素材を開拓することを目指している。 磁性電子スピンを含む元素の中で、d-ブロック系に関しては、Mnを、f-ブロック電子系に関してはEuに関して、総合的な物質探索を行い、d-ブロックならびにf-ブロック磁性元素を含むSi及びGeナノクラスタ結晶の合成を行った。合成されたこれらに物質に対して、その電子状態を軟X線光電子分光を利用して詳細に検討した。また、新しく購入する低温比熱測定システムを用いて磁気比熱の観点からに基礎的研究を進めた。これらに研究の結果、これらの新しい物質系においては、クラスタの特異サイトに導入したd-ならびにf-ブロック原子の波動関数は、フェルミ面のバンドを形成する波動関数に大きく寄与していることが判明した。このことが、これらの物質で発現する磁性と大きく関係しているものと考えられる。局在あるいは遍歴する磁性電子スピンはフェルミ面に広がる伝導電子スピンと強く相互作用していると考えられる。従って、本物質で磁気比熱を測定することは、極めて重要であった。実際に行った比熱測定装置を用いた磁気比熱の測定からは、低温でのスピングラス的物性を反映したと考えられる磁気比熱が観測された。
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[Publications] M.S Denning, I.D.Watts, S.M Moussa., P.Durand, M.J.Rosseinsky, K.Tanigaki: "Closed-packed C_<70>^<3-> phases-synthesis, structure and electronic properties"J.Amer.Chem.Soc.. 124. 5570-5580 (2002)
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[Publications] 谷垣勝己: "NTS出版社"カーボンナノチューブ:基礎と工業化の最前線. 143-182 (2002)
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[Publications] 谷垣勝己: "別冊日経サイエンス特集号"ここまで来たナノテク:ナノロボットの幻想(翻訳). 80-82 (2002)
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[Publications] 谷垣勝己: "第3回炭素系高機能材料シンポジウム:21世紀を担う炭素材料"炭素系物質におけるドーピング手法と物性. 52-57 (2003)
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[Publications] 谷垣勝己: "超伝導の夢-超伝導研究の最前線とその未来-"物理パラメータから見た高温著伝導の可能性. 156-172 (2003)