2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13304056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅原 正 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50124219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 勇三 茨城大学, 理学部, 教授 (10152969)
松下 未知雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (80295477)
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Keywords | スピン分極ドナー / 磁性 / 導電性 / 超分子 / 分子素子 / 磁性金属 / 多重項 / 量子効果 |
Research Abstract |
14年度は、主にスピン分極電流を計測できるようにスピン分極ドナーを構造化する研究を行った。 (1)13年度に確立した、フェニルニトロニルニトロキシドを置換したチオールと金との相互作用を利用し、これを金ナノ粒子に置換することで、金に対するスピン分極の効果を極限まで高めることを試みた。その結果、直径4nmの金ナノ粒子に、約100分子のフェニルニトロニルニトロキシドが置換した有機無機複合系を得る手法を確立した。さらに、このラジカルで修飾された金ナノ粒子は、ESRにおいて、300mTにも広がった線幅を有することを見出した。ラジカルのスピンと金表面の電子との相互作用によって、ESRの緩和が非常に早められたものと解釈される。さらに、本研究を遂行するにあたり、理学電気(株)と共同で、X線小角散乱法によって、金ナノ粒子の粒子サイズとその分布を、短時間かつ簡便に、精密に評価する手法を確立したことは、特筆に値する。 (2)上記のラジカルで修飾された金ナノ粒子の分極効果を直接に検出するために、金ナノ粒子の導電性の測定を試みた。ナノ粒子の溶液を直接櫛形電極の上で集積させた固体は、ほとんど絶縁体であったのに対し、ここにデカンジチオールを導入し、有機分子で直接金ナノ粒子間を接続した場合には、抵抗値が数千分の1にまで減少した。さらにその際、抵抗の温度依存性の測定から、活性化エネルギーは約20meVであることが見積もられた。この値は、スピンを持たない金ナノ粒子において報告された値とほぼ同じであり、ラジカルの置換によっても金ナノ粒子の金属性が保たれている事を示している。 (3)上記の金ナノ粒子のネットワーク構造の形成に際し、粒子間を接続する分子ワイヤーにスピン分極を導入するために、ピロール-オリゴチオフェン型の超構造スピン分極ワイヤーの両α末端にチオール前駆体を導入した分子を合成し、その大量調製法を確立した。 (4)スピン分極ドナーであるETBNに長鎖アルキル基を導入することによって、製膜性を高めたスピン分極ドナーを合成した。この物質は、53℃と融点が低く、溶融・冷却により、容易に薄膜を調製することが出来る。この薄膜を、シリコンウェハー上の電極の上に形成したところ、薄膜試料が電界効果トランジスターとして動作することを確認した。 以上、当初の計画に従い、順調にスピン分極分子の合成とその評価手法の開発を遂行した。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] M.M.Matsushita 他4名: "Formation of Self-Assembled Monolayer of Phenylthiol Carrying Nitronyl Nitroxide on Gold Surface"Chem. Lett.. 6. 596-597 (2002)
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[Publications] A.Izuoka 他5名: "Charge Transfer Assisted Ferromagnetic Coupling Observed in an Ion-Radical Salt of a Cross-Cyclophane TTF-Based Donor"Chem. Lett.. 9. 910-911 (2002)
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[Publications] Y.Noda 他7名: "Peculiar difference in distribution of electrons and nuclei of hydrogen-bonded hydrogen atoms in MeHPLN"Ferroelectrics. 269. 327-332 (2002)
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[Publications] G.Harada 他4名: "Preparation and Characterization of Gold Nano-Particles Chemisorbed by π-Radical Thiols"Chem. Lett.. 10. 1030-1031 (2002)
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[Publications] T.Mochida 他3名: "Bis(tetra-n-butylammonium)bis(μ-1,2-dicyanoethene-1,2-dithiolato-κ^3S, S': S')bis[1,2-dicyanoethene-1,2-dithiolato-κ^2,S']cobalt(III)]"Acta Cryst. C58. 431-433 (2002)
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[Publications] J.Nakazaki 他6名: "Design of Spin-Polarized Molecular Wire as a Prototypal Unimolecular Quantum Spin Device"Internet Electron. J.Mol.Des. 2. 112-127 (2003)
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[Publications] J.Nakazaki 他6名: "Design and preparation of pyrrole-based spin-polarized donors"J.Materials Chem. (in press). (2003)
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[Publications] T.Sugawara 他2名: "Nanotechnology toward the Organic Photonics "Self-Assembling Organic Ferromagnet : Frontier Orbital Control of Spin-Polarized Organic Radicals""Goo Tech Ltd.Chitose(Japan). 27 (2002)
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[Publications] 菅原 正 他1名: "化学フロンティア(6)有機量子スピン素子の開発と設計「分子ナノテクノロジー-分子の機能をデバイス開発に活かす」"化学同人. 10 (2002)
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[Publications] 菅原 正 他1名: "化学と教育「超分子化学は何を目指すか」"日本化学会. 4 (2002)