2004 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアと新大陸への人類の拡散を古人骨DNAから探る
Project/Area Number |
13304066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 信太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20143357)
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Keywords | 新大陸 / 人類進化 / 遺伝的多様性 / メキシコ / テオティワカン / ミトコンドリア / 月のピラミッド / 羽毛の生えた蛇神殿 |
Research Abstract |
中米メキシコの2000年前のテオティワカン遺跡の一般人類集団の遺伝的多様性を、太陽のピラミッド、月のピラミッドならびに羽毛の生えた蛇神殿を主体とした祭祀の中心部周辺の一般家屋の埋葬墓から出土した古人骨のDNA分析により明らかにした。また、前年度までに明らかにした月のピラミッドならびに羽毛の生えた蛇神殿から出土した生け贄と考えられる古人骨のDNA分析とも比較した。分析方法は基本的に従来と同様であり、(1)古人骨試料からのDNAの抽出と精製、(2)PCR法による精製DNAの増幅、(3)増幅したDNAをもちいたダイデオキシ法による塩基配列の決定、をおこない、得られた塩基配列を基に集団の遺伝的多様性を求めた。比較分析したDNA領域は、高度の遺伝的多様性を有し、世界中の多くの現生ならびに古代人類集団に関するデータが既に得られているために本研究の目的に最も適した、ミトコンドリアDNAのDループ領域である。テオティワカン遺跡の一般人類集団の遺伝的多様性を現代のネイティブアメリカン集団(北米3集団、中米3集団、南米4集団)と比較したところ、予想とは異なり、現代の中米ネイティブアメリカン集団とではなく、現代の南米ネイティブアメリカン集団と最も近縁な関係を示していた。Dループ領域以外のミトコンドリアDNAの遺伝的多様性に関する情報を含めたハプロタイプ解析など、今後の詳細な分析を必要とはするが、昨年度に得た古代のネイティブアメリカン集団の遺伝的多様性は高かった可能性を考慮すると、本結果は、コロンブス以降に中米においてネイティブアメリカン集団の遺伝的構成が、集団の構成員だけではなく、地域的な集団の構成そのものも劇的に変化した可能性を示唆する。
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Research Products
(4 results)