2003 Fiscal Year Annual Research Report
電波天文観測用8Gサンプル/秒・超高速A/D変換LSIの開発
Project/Area Number |
13354001
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Research Institution | National Astronomical Observatory |
Principal Investigator |
奥村 幸子 国立天文台, 電波天文学研究系, 助教授 (20224842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 欣也 九州東海大学, 工学部, 講師 (00279382)
近田 義広 国立天文台, 電波天文学研究系, 教授 (30126122)
川口 則幸 国立天文台, 地球回転研究系, 教授 (90214618)
井口 聖 国立天文台, 電波天文学研究系, 助手 (10342627)
百瀬 宗武 茨城大学, 理学部, 助手 (10323205)
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Keywords | 電波天文学 / 観測装置 / 超高速サンプリング / アナログ・デジタル変換 / デジタル信号処理 / 大規模集積回路 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に試作した超高率A/D変換LSI(4ないし8GHzサンプリング、3ないし2ビット、SiGeプロセス)の組み立て及びサンプリング動作の確認を行なった。その結果、同LSIの内部化回路が想定よりも高い温度になっており、そのために、バイアス電圧が変化し、A/D変換部分の回路が正常に動作していないことがわかった。バイアス電圧の実測値とシミュレーション時のパラメータ(バイアス電圧の温度依存性)から推測した、内部回路の温度は約115℃であった。そこで、今年度は、上記A/D変換LSIに関して、予測される温度環境で最適化した設計を再度実行し、それを基にして試作しなおすこととした。そのため、予定していた、A/D変換LSIを用いた試験回路については、製作は行わず、設計までを今年度の内容とすることにした。 同LSIについては、2つの点に留意して再設計を行った。1つは、サンプリング回路内でアナログ信号をA/D変換するためのバイアス電圧自体が、温度変化に大きく影響を受ける回路構成になっていた。そこで、このバイアス電圧の温度依存性を下げるような回路構成に変更した。2つめは、3つの内部温度(25、75、115℃)での回路シミュレーションを実施し、115℃でも内部回路が動作可能で、かつ、パラメータの最適化を75℃で行った。 再設計を終了し、再度の試作を行う間に、同LSIの性能評価を行うための試験回路の設計検討を行った。 試験回路の設計にあたっては、既存の広帯域分光相関システム(国立天文台集中相関装置等)に接続してスペクトル取得実験を行うことを念頭に、既存装置とのインターフェース回路を含み、かつ、接続及び分離が容易なインターフェース設計を行った(担当川口)。試験回路は、最高8GHzという超高速のサンプリングクロックの供給回路を含むため、基板内での高周波信号の伝送状態をシミュレーション等により確認した上で回路の基板設計を行った(担当松本)こととした。伝送シミュレーションでは、特に4-8GHzのクロック信号の分配が最も難しく、回路の正常動作を左右すると考え、実際の試験回路で使用するクロック分配LSIを用いて伝送実験も行った(担当奥村)。その結果、クロック分配器間では、回路設計・実装で予定される6cm程度の4GHz信号の伝送は問題なく行えることを実測で確認することができた。 現在(平成16年3月)は、再設計された超高速A/D変換LSI-2の組み立て及びサンプリング動作の確認を実施中である。試験回路を用いた性能評価までは行えなかったが、サンプリング動作の確認作業の結果、サンプリング回路の静特性および消費電力については、良好な結果を得ることができた。サンプリング回路の微分及び積分誤差はいずれもすべて0.1LSB以内であり、消費電力の実測値は、3.84Wattでシミュレーション値(3.744W)の3%増に留まっていた。本研究としては、超高速A/D変換LSI-2の動特性測定までをその内容として、研究結果をまとめる予定である。
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