2002 Fiscal Year Annual Research Report
国家・開発政策をめぐる環境変化と少数民族の生存戦略:北東アフリカ諸社会の比較研究
Project/Area Number |
13371008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福井 勝義 京都大学, 総合人間学部, 教授 (60014510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 廉也 九州大学, 大学院・批較社会文化研究院, 助教授 (20293938)
松田 凡 京都文教大学, 人間学部, 助教授 (90288689)
宮脇 幸生 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (60174223)
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Keywords | 北東アフリカ / エチオピア / 国家政策 / 生業体系 / 環境利用 / 生存戦略 / 開発 / 民族 |
Research Abstract |
本研究は、エチオピアを主要な対象とし、国家の諸政策および開発援助が浸透していく過程で、周辺の少数民族がどのように生存戦略を見いだし、新たな再編成をはかっていくかを実証的に浮き彫りにすることを目的とする。 2年目である平成14年度は、国家政策に対するエチオピア西南部諸社会の対応・変化の諸相の分析を行うことを目指してきた。とりわけ、在来の政治組織や土地所有の変化といった「社会的対応」と農耕・牧畜技法や栽培する作物の比重、その品種の変遷といったより長期的なスパンで発生するような「生業レベルの変化」の2点に注目した。 こうした目的を達成するため、今年度は、国内での研究会合を5回開催して研究メンバー間での情報交換と統合的な分析を進めた一方、研究代表者をはじめ8人の研究分担者および研究協力者がエチオピア西南部において現地調査を行って情報収集した。その結果、西南部諸社会では、帝政時代・デルグ政権時代・EPRDF現政権時代という3つの歴史区分でそれぞれ影響のあり方や質などが異なっていることが明らかになった。たとえば,重要な換金作物であるコーヒーの栽培地帯では、1950年代以降のプランテーションの拡大にともなって南部諸民族を賃金労働者として雇用しはじめ、それがオロモ農民の生業形態にも大きな変化をもたらしていた。一方、南部ホール社会では、20世紀初頭からの北部民の流入という経験をへて、あらたなカルト教団の隆盛といった文化的な変容が見られた。さらに、こうした歴史過程を浮き彫りにするためのアーカイブ資料についての調査を行った結果、ジンマとジンカという2つの場所で過去の行政資料が保存されていることが判明した。 来年度以降は、アーカイブ資料の収集にくわえ,衛星画像の解析を進めることによって、国家・開発政策にともなう諸社会の環境利用変化を生態環境データと照らし合わせて分析することを目指す。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 佐藤 廉也: "森林焼畑農耕民の酒造りと飲酒の機能-エチオピア西南部の事例を中心に-"JCAS連携研究成果報告. 4. 183-202 (2003)
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[Publications] 宮脇 幸生: "外部の馴化と公共空間の成立-エチオピア西南部クシ系農牧民ホールの首長制をめぐる象徴空間についての考察"アジア・アフリカ言語文化研究. 64. 1-36 (2002)
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[Publications] 松村 圭一郎: "社会主義政策と農民-土地関係の歴史過程-エチオピア西南部・コーヒー栽培農村の事例から-"アフリカ研究. 61. 1-20 (2002)