2002 Fiscal Year Annual Research Report
非顕示事象の認識に関する比較認知科学的・比較発達学的研究
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13410026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 和生 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80183101)
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Keywords | 比較認知 / 知覚制約条件 / 知覚的補間 / 社会的知性 / 霊長類 / ハト / 心の理論 / 推論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、多様な動物種を対象に、明示的に提示されない事象の認識過程を実験的に分析し、相互に比較することを通じて、物理的・社会的環境を認識するための制約条件がいかに進化したのかを明らかにすることである。この目的を達成するため、本年度は以下の研究をおこなった。1)フサオマキザルの知覚的補間過程を分析し、彼らが隠蔽された領域の輪郭のみならず内部の模様についても全体的規則性の原理に従って補間することを示した。ヒトもほぼ同じ補間原理に従うことを示した。2)チンパンジーの時空間的境界形成過程を分析し、ヒトと比較した。刺激のフレーム長、運動速度等の操作に対し、両種は同様の認識の変化を示した。3)ハトが運動する複数光点の相対運動を知覚するか否か分析した。ハトは絶対運動により注意を向けたが、一方の光点を完全な枠に変えると、相対的運動を知覚した(牛谷との共同研究)。4)霊長類乳児を対象に、バイオロジカルモーションの認識の発達を調べ、対象の実運動を観察する経験が重要な要因である示唆する追加資料を得た(足立らとの共同研究)。5)霊長類乳児の顔図形認識の発達が、おおむねヒトと類似していることを示す追加資料を得た(桑畑らとの共同研究)。6)フサオマキザルとリスザルに、他者の行為の予測が可能かを調べ、前者では自身に向けられた他者の行為は予測できることを示した(黒島との共同研究)。7)ベランジェツパイが空間迷路を用いた推移的推論課題を解決できることを示した(高橋との共同研究)。8)フサオマキザルが、2頭間の共同作業課題を自発的に解決することを示す追加資料を得た(服部らとの共同研究)。9)野生ベルベットモンキーが、ヒトの注意の状態を認識できるか分析し、肯定的な結果を得た(堤らとの共同研究)。10)同じく野生のベルベットモンキーが1-1、2-1等の簡単な引き算ができることを示した(堤らとの共同研究)。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] Kosugi, D., Fujita, K.: "How do 8-month-old infants recognize causality in object motion and that in human motion?"Japanese Psychological Research. 44(2). 66-78 (2002)
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[Publications] 藤田和生: "動物の心を探る-見えないものの認識を通して-"哲学研究. 574. 39-88 (2002)
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[Publications] 桑畑裕子, 石川悟, 藤田和生: "霊長類における社会的対象認知の発達"心理学評論. 45(3). 367-381 (2002)
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[Publications] 足立幾磨, 藤田和生, 桑畑裕子, 石川悟: "マカクザル乳児における生物的運動の知覚"友永雅己・田中正之・松沢哲郎(編著)「チンパンジーの認知と行動の発達」京都大学学術出版会. 333-336 (2003)
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[Publications] 桑畑裕子, 藤田和生, 石川悟, 足立幾磨, 友永雅己ほか: "マカクザル乳児における顔図形の認識"友永雅己・田中正之・松沢哲郎(編著)「チンパンジーの認知と行動の発達」京都大学学術出版会. 337-342 (2003)
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[Publications] 橋彌和秀, 小林洋美, 石川悟, 藤田和生, 林安紀子: "ヒトおよびニホンザル乳児における視聴覚情報に関する「初期知識」"友永雅己・田中正之・松沢哲郎(編著)「チンパンジーの認知と行動の発達」京都大学学術出版会. 359-364 (2003)
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[Publications] Kosugi, D., Ishida, H., Fujita.K.: "10-month-old infants' inference of invisible agent : distinction in causality between object motion and human action"Animal Cognition. 45(1). 15-24 (2003)
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[Publications] Kuroshima, H., Fujita, K., Adachi I I., Iwata, K., Fuyuki, A.: "A capuchin monkey (Cebus apella) understands when people do and do not know the location of food."哲学研究. (印刷中). (2003)
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[Publications] Fujita, K., Kuroshima, H., Asai, S.: "How do tufted capuchin monkeys (Cebus apella) understand causality involved in tool use?"Journal of Experimental Psychology : Animal Behavior Processes. 29(3)(印刷中). (2003)
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[Publications] 高橋真, 藤田和生: "ラット(Rattus norvegicus)における視覚刺激に対する推移的反応(Transitive Responding)"動物心理学研究. (印刷中). (2003)
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[Publications] 坂本百大, 川野洋, 磯谷孝, 太田幸夫(編)(項目執筆): "記号学大事典"柏書房. 493 (2002)
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[Publications] 北川高嗣, 須藤修, 西垣通, 浜田純一, 吉見俊哉, 米本昌平(編)(項目執筆): "情報学事典"弘文堂. 1140 (2002)