2001 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児の文章理解の方略に関する研究―黙読時の眼球運動の分析による検討―
Project/Area Number |
13410031
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鄭 仁豪 筑波大学, 心身障害学系, 助教授 (80265529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 哲志 東京成徳大学, 人文学部, 教授 (80327262)
柿澤 敏文 筑波大学, 心身障害学系, 講師 (80211837)
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Keywords | 文章読みの方略 / 眼球運動 / 読書力 / 聴覚障害児 / 読みの過程 |
Research Abstract |
本研究は、一般に読みに困難を示す聴覚障害児の文章読みの方略を究明するために、読みのレベルの高い聴覚障害児の文章よみの方略を、黙読時の眼球運動の側面から検討し、明らかにすることを目的とするものである。平成13年度においては、主に、物語文読みの方略を、読書力の高いグループと読書力の低いグループを対象に、検討した。 被験児は、先天性高度聴覚障害児(平均聴力レベル95〜120dB(HL))の小学部3〜4年生18名と6年生12名、中学部2〜3年生16名の計46名であった。実験材料は、小学部4年生用の物語文(約5分程度で読める分量)であり、実験装置は、眼球運動測定装置(竹井機器S-0163)が使われた。データの分析は、読みの時間・停留頻度・回帰運動の頻度・読みのスパン・理解度の側面から行われた。 その結果、読書力の高い聴覚障害児は、読みの時間において、小学部児童と中学部生徒の間には差がある傾向が示された。停留・回帰運動の頻度においては、小学部児童に比べて中学部生徒は減少し、読みのスパンは拡大される傾向が示された。読みの理解においても、小学部児童に比べて中学部生徒の理解度が高く示された。一方、読書力の低い聴覚障害児においては、このような傾向が示されなかった。 また、読書力の高い聴覚障害児は、全体として、サッカード運動や逆行運動、停留、行変え時において、スムーズな眼球運動が示される一方、読書力の低い聴覚障害児においては、サッカード運動に常に小さな逆行運動あるいは微動が伴われること、また、停留においても時間的メリハリのない長時間の停留が認められるなど、いくつかの読みの過程において読書力の高い聴覚障害児とでは、質的な違いが示された。また、物語を読み進むにつれ、読書力の高い聴覚障害児においては、読みの時間や停留・逆行運動、読みのスパンにおける変化が示される一方、読書力の低い聴覚障害児においてはそのような傾向は示されなかった。 来年度においては引き続き、説明文や詩などの文章ジャンル別検討を行う予定である。
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