2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパにおける宗教的寛容と不寛容の生成・展開に関する比較史的研究
Project/Area Number |
13410111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深沢 克己 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (60199156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松嶌 明男 清泉女子大学, 文学部, 講師 (20306210)
羽田 正 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (40183090)
高山 博 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (90226936)
千葉 敏之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (20345242)
勝田 俊輔 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (00313180)
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Keywords | ヨーロッパ / 宗教 / 民族問題 / 近代 / 中世 / イスラーム / 寛容 |
Research Abstract |
本研究計画の最終年度にあたる平成15年度は、各研究分担者がおこなった個々の研究成果を年2回の研究報告会において発表し、全体で討議をおこなった。まず7月の研究会では、深沢が、18世紀のフランスにおけるフリーメイソンと宗教的寛容との関係について研究史と論点の整理をおこない、羽田は、17世紀後半〜18世紀初に生きたユグノー商人シャルダン兄弟を取り上げ、二人の信仰の問題とナショナリズムについて彼らの活動や彼らが残した文書を手掛かりに考察した。また、千葉は、紀元千年期のラテン=キリスト教世界の周辺地帯を「伝道空間」として捉え、同空間において展開した宗教的寛容と不寛容のあり方について年代記や証書史料に基づいて検討した。12月におこなわれた第2回研究会では、勝田が、19世紀初めのアイルランドにおける宗派対立と国家の関係を「寛容(toleration)」から「融和(conciliation)」への流れのなかで捉え、また高山は、12世紀シチリアにおけるキリスト教徒とイスラム教徒の関係に着眼し、中世シチリアにおける異宗教の対立と共存について考察した。一方、松嶌は「敬神博愛教」を取り上げ、ナポレオン体制に対する宗教的抵抗について検討し、最後に、ゲスト報告者として招いた西川杉子氏は、イギリス名誉革命体制とプロテスタント・ネットワークについて報告を行い、啓蒙主義時代におけるプロテスタンティズムのあり方について考察した。昨年同様、研究代表者深沢が主催する国際商業史研究会も2回の研究会をもち、第1回目には、野村啓介氏が「19世紀ボルドー商業会議所」について、澤井一彰氏が「16・17世紀オスマン朝における穀物流通政策」について報告した。第2回目には、玉木俊明氏が「大西洋貿易の拡大とヨーロッパ北部の商業」について、太田啓子氏が「アミール・マッカの経済的基盤」という題目で報告をおこなった。これらの報告と討議を十分に踏まえ、研究代表者および研究分担者は、科研費補助金成果報告書において、ヨーロッパにおける宗教的寛容と不寛容の生成・展開についての比較史的研究の諸成果をまとめた。
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Research Products
(14 results)
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[Publications] Katsumi, Fukasawa: "Topographie et urbanisme de Marseille au XVIIIe siecle. Essai d'histoire comparee."Institut de recherches sur les civilisations de l'Occident modarne. Evolution des mondes modernes. 79-98 (2003)
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[Publications] 深沢 克己: "国際商業史と比較経済史-馬場哲氏の書評に応える-"史学雑誌. 113-1. 99-108 (2004)
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[Publications] Hiroshi, Takayama: "Kingdom and States in Medieval France State and Empire in British History."Proceeding of the Fourth Anglo-Japanese Conference of Historians 2003 (Tokyo, Japan). 27-36 (2003)
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[Publications] 高山 博: "フリードリヒ二世と十字軍"『NHKスペシャル文明の道・イスラムと十字軍』日本放送出版協会. 154-174 (2004)
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[Publications] 羽田 正: "ヨーロッパとイスラーム世界?-二項対立的世界史叙述の克服にむけて-"谷川稔(編)『歴史としてのヨーロッパ・アイデンティティー』山川出版社. 307-325 (2003)
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[Publications] 羽田 正: "シャルダンの『つましい望み』とムスリム少女のスカーフ:国家の宗教と個人の信仰"石井洋二郎・工藤庸子(編)『フランスとその<外部>』東京大学出版会. (印刷中). (2004)
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[Publications] 羽田 正: "東洋学・歴史学とイスラーム地域研究"佐藤次高(編)『イスラーム地域研究の可能性』東京大学出版会. 21-48 (2003)
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[Publications] 宮崎 和夫: "ハプスブルク朝スペインと地中海"歴史学研究会編『多元的世界の展開』青木書店. 170-207 (2003)
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[Publications] Shunsuke, Katsuta: "German Palatine immigration of 1709:An aspect of transition from Ireland of immigration to Ireland of parliament"Proceeding of the Fourth Anglo-Japanese Conference of Historians 2003 (Tokyo, Japan). 67-78 (2003)
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[Publications] Shunsuke, Katsuta: "The Rockite Movement in Country Cork in the Early 1820s"Irish Historical Studies. 131. 276-294 (2003)
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[Publications] 千葉 敏之: "閉じられた辺境--中世東方植民史研究の歴史と現在"現代史研究. 49. 1-23 (2003)
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[Publications] 千葉 敏之: "皇帝証書--中世的知性の共演する空間"歴史と地理. 564. 61-65 (2003)
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[Publications] 高山 博: "<知>とグローバル化-中世ヨーロッパから見た現代世界-"勁草書房. 233 (2003)
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[Publications] 高山 博: "文明共存の道を求めて-地中海世界から現代をみる-"日本放送出版協会. 140 (2003)