2002 Fiscal Year Annual Research Report
不安定な三重項カルベンとナイトレン類のX線構造解析とその反応性の比較
Project/Area Number |
13440174
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大橋 裕二 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40016118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 あき子 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (40226650)
植草 秀裕 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60242260)
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Keywords | 三重項カルベンの構造 / 三重項ナイトレンの構造 / X線解析 / 不定中間体の構造 / 励起構造の解析 / 白金錯体の励起状態 / ジアゾメタン結晶 / アジド化合物結晶 |
Research Abstract |
化学反応を理解するには、反応途中に生成する中間体を捉えて、その性質を知ることが不可欠である。レーザーと組み合わせた高速分光学の進歩によって、フェムト秒でしか存在しない不安定な中間体の存在も知られてきた。しかしその中間体の構造についてはほとんど知られていない。本研究では、有機化学反応にしばしば見られる三重項カルベンや三重項ナイトレンの構造を解析することを目標とした。カルベンの場合はジアゾメタンの結晶、ナイトレンの場合はアジド化合物の結晶に、80Kという低温下で紫外光を照射して、結晶内に不安定な三重項カルベンやナイトレンを生成し、この構造を解析することを試みた。これまでこの種の研究を阻害してきた要因は、結晶内への光の透過力が悪く少量の不安定生成物しかできないという点と、生成した不安定生成物をデータ測定の間長持ちさせることができないという点にあった。これらは長波長の光を利用することと、80Kという低温でデータ測定することで克服した。しかし類似化合物の結晶に広範に適用しようとすると、反応が進行しないか、反応の進行が速くて容易に結晶が崩壊してしまう場合が多いという難問が生じた。この問題は反応物のジアゾメタンやアジド化合物と複合体を作るホスト分子を導入したホストーゲスト結晶を作製し、この結晶に光を照射することで不安定化合物をホスト分子が作る格子の中に比較的多量作ることができた。単体の結晶では10%程度の不安定種の生成量がホストーゲスト結晶では30%程度まで増加させることができ、構造解析の精度が飛躍的に向上した。これらの解析結果から得られた三重項カルベンやナイトレンについて理論計算で構造を求めると通常の近似法では全く一致しないが、近似の精度を上げると、実験値と一致した。このことによって、これまで不安定種の場合には不明であった理論計算の精度を直接検証することができた。さらに白金錯体の励起構造を解析することも試みた。紫外光照射によって白金錯体中の白金-白金距離が短縮することを実験的に短縮することが確認され、その短縮値も定量的に求められた。これらの実験データを得るために新たに開発された迅速X線解析装置は米国でも特許が登録された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Masaki Kawano, Katsuyuki Hirai, Hideo Tomioka, Yuji Ohashi: "Structure Analysis of a Transient Triplet Carbene Trapped in a Crystal"J.Am.Chem.Soc.. 123. 6904-6908 (2001)
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[Publications] Nobuhiro Yasuda, Masaki Kanazawa, Hidehiro Uekusa, Yuji Ohashi: "Excited-state Structure of a Platinum Complex by X-ray Analysis"Chem.Lett.. 2002. 1132-1133 (2002)
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[Publications] Pance Naumov, Akiko Sekine, Hidehiro Uekusa, Yuji Ohashi: "Structure of the Photocolored 2-(2',4'-Dinitrobenzyl) pyridine Crystal : Two Photon Induced Solid-State Proton Transfer with Minor Structural perturbation"J.Am.Chem.Soc.. 124. 8540-8541 (2002)
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[Publications] Takaaki Hosoya, Takashi Oohara, Hidehiro Uekusa, Yuji Ohashi: "Crystalline -State Photoismerization of α, β-Unsaturated Thioamide Analyzed by X-rays"Bull.Chem.Soc.Jpn.. 75. 2147-2151 (2002)
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[Publications] Masaki Kawano, Yoshiki Ozawa, Koutatsu Matsubara, Hidekazu Imabayashi, Minoru Mitsumi, Kshiro Toriumi, Yuji Ohashi: "Synchrotron Radiation Structure Analyses of the Light-induced Radical Pair of a Hexaarylbiimidazolyl Derivative. Origin of the Spin-Multiplicity Change"Chem.Lett.. 2002. 1130-1131 (2002)
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[Publications] Yoshiki Ozawa, Madoka Terashima, Minoru Mitsumi, Koshiro Toriumi, Nobuhiro Yasuda, Hidehiro Uekusa, Yuji Ohashi: "Photoexcited Crystallography of Diplatinum Complex by Multi-exposure IP Method"Chem.Lett.. 2003. 62-63 (2003)