2002 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界・亜臨界水中の無触媒有機単位反応の機構に関する研究
Project/Area Number |
13440179
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中原 勝 京都大学, 化学研究所, 教授 (20025480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 千尋 京都大学, 化学研究所, 教務職員 (40293948)
岡村 恵美子 京都大学, 化学研究所, 助手 (00160705)
松林 伸幸 京都大学, 化学研究所, 助手 (20281107)
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Keywords | 超臨界水 / 亜臨界水 / 無触媒反応 / 酸触媒反応 / 核磁気共鳴 / 計算機シミュレーション / 反応速度定数 / ラマン分光法 |
Research Abstract |
本研究は、超臨界・亜臨界水中の無触媒反応の体系的理解を目指すものである今年度は、まず、アルデヒドの反応に焦点を当てた。通常条件下では、α-水素を持たないアルデヒドは、強塩基条件下で、Cannizzaro不均化反応を起こすことが知られている。しかし、α-水素を持たないようなアルデヒドは種類が限られており、α-水素を持つものは強塩基条件下でアルドール縮合が優先するので、通常条件下におけるCannizzaro反応の有用性は小さい。これに対して、本研究では、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドから始まる多くのアルデヒドが、超臨界水中では、無触媒条件で、Cannizzaro様の不均化反応を起こすことを見出した。アセトアルデヒドに対して、詳細な解析を行い、350℃以下ではアルドール縮合が優勢だったものが、それ以上の温度では、Cannizzaro様反応に移行することを明らかにした。また、超臨界水内では、アセトアルデヒドは、Cannizzaro様反応と平行して熱分解を起こし、メタンを生成することを示した。熱分解で生じるもう一つの化合物である一酸化炭素は、ホルムアルデヒドに転化し、それがアセトアルデヒドと交差Cannizzaro様の反応をすることによって、二酸化炭素とエタノールが生成物として表れる。Cannizzaro様反応の生成物は、酢酸とエタノールであり、結果として大量のエタノールが生成物として得られる。さらに、安息香酸の脱炭酸反応に対する置換基効果を検討した。パラ位の置換基を、F、Cl、Brと変えると、超臨界水の密度が小さい時は、大きな置換基効果が見られるが、密度が上がると置換基効果がマスクされることを見出した。また、脱ハロゲン反応は、FとBrが置換基の時のみに顕著でありClのときには進行しなかった。この知見は、ダイオキシンやPCBの悪名高い安定性を理解する鍵を与えるものである。
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[Publications] M.Kubo, R.M.Levy, P.J.Rossky, N.Matubayasi, M.Nakahara: "Chloride Ion Hydration and Diffusion in Supercritical Water Using Polarizable Water Model"Journal of Physical Chemistry B. 106. 3979-3986 (2002)
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[Publications] K.Ibuki, M.Ueno, M.Nakahara: "Reliability and limitations of the Hubbard-Onsager continuum dielectric friction theory for limiting ionic mobility in sub-and supercritical water"Journal of Molecular Liquids. 98-99. 129-144 (2002)
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[Publications] N.Matubayasi, M.Nakahara: "Theory of solutions in the energy representation. II. Functional for the chemical potential"Journal of Chemical Physics. 117. 3605-3616 (2002)
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[Publications] T.Yamaguchi, Y.Kimura, M.Nakahara: "Study of Nonpolar Solvation Dynamics in Supercritical Lennard-Jones Fluids in Terms of the Solvent Dynamic Structure Factor"Journal of Physical Chemistry B. 106. 9126-9134 (2002)
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[Publications] T.Kimura, N.Matubayasi, H.Sato, F.Hirata, M.Nakahara: "Enthalpy and entropy decomposition of free-energy changes for side-chain conformations of aspartic acid and asparagine in acidic, neutral, and basic aqueous solutions"Journal of Physical Chemistry B. 106. 12336-12343 (2002)
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[Publications] Y.Nagai, C.Wakai, N.Matubayasi, M.Nakahara: "Noncatalytic Cannizzaro-type Reaction of Acetaldehyde in Supercritical Water"Chemistry Letters. 2003. 310-311 (2003)
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[Publications] 松林伸幸, 若井千尋, 中原 勝: "超臨界流体のすべて 2章 超臨界流体のミクロ物性、2節 NMRによる超臨界流体の構造解析"荒井 康彦監修、テクノシステム. 23-26 (2002)
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[Publications] 若井千尋, 松林伸幸, 中原 勝: "新しい高圧科学 4.2章 液体・溶液物性への応用"毛利 信男、講談社サイエンティフィク. 147-201 (2003)
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[Publications] 中原勝: "化学便覧 基礎編"丸善(印刷中). (2003)