2001 Fiscal Year Annual Research Report
混合溶媒系クラスターの構造化学とそれが支配する反応特性に関する研究
Project/Area Number |
13440222
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石黒 慎一 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (80111673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅林 泰宏 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (90311836)
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Keywords | 溶媒和立体効果 / 配位数 / 滴定ラマン分光 / 回転異性体 / 反応速度 / 活性化パラメータ |
Research Abstract |
本研究では、独自に開発した滴定ラマン分光法を用い、アミド系非水溶媒であるDMF, DMA, DMPA,中における金属イオン溶媒和クラスター構造に関し、溶媒和の立体効果の観点から研究をおこなった。DMF、DMAおよびそれらの混合溶媒中で、Mg^<2+>, Ca^<2+>, Sr^<2+>, Ba^<2+>イオンの溶媒和錯体の溶媒和錯体の配位数は、それぞれ6, 7, 8および8であった。配位溶媒分子のバルク溶媒分子からの振動数シフトは配位酸素原子の距離と相関し、結合距離が短くなるほどシフトは大きくなる。DMF中では距離とシフト値に直線関係があるがDMA中では立体効果のためこの関係が成立しない。また、混合溶媒中のシフト値はDMA組成の増加とともにDMFで低下するが、DMAは変化しないことが見出された。一方、DMPAは、カルボニル炭素に結合したエチル基の末端炭素がカルボニル酸素とシス位にある構造が安定であるが、90°回転異性体が共存することが見出された。90°回転異性体はシス体に比べて5.1kJ mol^<-1>だけエンタルピー的に不安定である。しかし、コバルト(II)イオンに配位すると逆に90°回転異性体が-3.4kJ mol^<-1>より安定になることがラマンスペクトルバンドの温度依存性から見出された。この構造異性化は溶媒和の立体効果に起因するものと考えられる。また、ストップトフローによる反応速度の研究では、反応CoCl_3^-+Cl^-=CoCl_4^<2->において、DMF, DMA中で活性化エントロピーが負であり、活性化エンタルピーはDMFに比べDMAでより増大した。DMPA中では活性化エントロピーは0に近く、活性化エンタルピーはDMAよりもさらに増大した。この結果は、DMPAの溶媒和の立体効果がDMAに比べて、一層強く働き、活性化状態での金属-溶媒結合が長くなることを示している。また、活性化エントロピーは、5配位活性化状態[CoCl_4(solvent)]^<2->を生成する会合機構が立体効果の増大のため交替機構へ変化することを示している。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] R.Kanzaki: "Distribution thermodynamics of 1,10-phenanthroline in nonionic surfactant Triton X-100 micelles"Chem. Phys. and Phys. Chem.. 3. 824-828 (2001)
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[Publications] M.Komiya: "Unusual interaction of diiodo complex of zinc(II) with 1,10-phenanthroline in N, N-dimethylformamide"Chem. Phys. and Phys. Chem.. 3. 224-229 (2001)
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[Publications] Y.Umebayashi: "Thermodynamics of [Co(NCS)_4]^<2-> at poly(ethylene oxide) and octylphenyl moieties in micelles of nonionic surfactants"J. Colloid & Interface Sci.. 237. 167-173 (2001)
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[Publications] H.Suzuki: "Complex of cobalt(II) bromide with hexamethylphosphoric triamide"Acta Cryst.. C57. 721-722 (2001)
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[Publications] Y.Umebayashi: "Individual solvation number of first-row transition metal(II) ions in solvent mixtures of N, N-dimethylformamide and N, N-dimethylacetamide -Solvation steric effect-"Chem. Phys. and Phys. Chem.. 3. 5475-5481 (2001)