2003 Fiscal Year Annual Research Report
多雪環境における高山植物集団の時空間的動態の解析と地球環境変化の影響予測
Project/Area Number |
13440226
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大原 雅 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (90194274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 壮則 北海道東海大学, 国際文化学部, 教授 (80206755)
和田 直也 富山大学, 理学部, 助教授 (40272893)
工藤 岳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (30221930)
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Keywords | 多雪環境 / 高山生態系 / 個体群動態 / 繁殖特性 / 遺伝的分化 |
Research Abstract |
最終年度にあたる平成15年度は、これまで継続調査をおこなってきた大雪山、立山、ロッキー山脈の3地域で最終段階の野外調査および遺伝解析を行った。 大雪山では、雪解け時期の異なる立地に成立したキバナシャクナゲ個体群間で、交配システム変異と花粉散布による遺伝的交流の程度を明らかにするために、マイクロサテライト遺伝子を用いた種子の遺伝解析を行った。また、雪解け傾度に沿って広く共存する、エゾノツガザクラとアオノツガザクラの種間交雑の方向性と雑種形成メカニズムについて、野外で交雑実験を行った。 立山では、周北極要素の高山植物・チョウノスケソウについて,立山の一ノ越個体群と水晶岳の個体群について,10酵素18遺伝子座でアロザイム分析を行った。その結果,両個体群ともすべての遺伝子座において,変異が全く無いことが分かった。また,立山一ノ越個体群において花の形質を調べたところ,北極圏の個体群に比べて雌しべに対する雄しべへの投資比が高いことが分かった。 ロッキー山脈では、高山性のカタクリ(Erythronium grandiflorum)を対象に、消雪時期の変動と集団間・集団内の遺伝的分化を調査した。酵素多型分析の結果、集団間の遺伝的分化を示す指標F_<ST>値は、集団間ならびに集団内のパッチ間でともに遺伝的分化の存在を示した。Partial Mantel testの結果は、遺伝的構造に対する開花フェノロジーの効果を示したほか、パッチ間の物理的な効果も明らかにした。以上のことより、高山性カタクリ集団において消雪時期の不均一性が開花フェノロジーを変動させ、花粉流動を妨げることにより、遺伝的構造を生じさせることが明らかになった。 このほか、野外生態調査と平行して、多年生植物の動態を記述する数理モデルに関する研究を行い、密度依存性がある動態の場合の環境変動に対する集団の応答を評価する方法を新たに開発した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kasagi, T., Kudo, G.: "Variations in bumblebee preference, pollen limitation, & selfing ability among neighboring populations : comparisons between Phyllodoce caerulea and Poce aleutica (Ericaceae) along snowmelt gradients"American Journal of Botany. 90. 1321-1327 (2003)
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[Publications] 和田直也, 中井祐美, 工藤 岳: "立山におけるチョウノスケソワの個葉特性-中緯度高山帯と寒帯・亜寒帯ツンドラとの比較-"植物地理・分類研究. 51. 49-57 (2003)
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[Publications] Tomimatsu, H., Ohara, M.: "Genetic diversity and multilocus genetic structure in the relictual endemic herb Japonolirion osense (Petrosaviaceae)"Journal of Plant Research. 117. 13-18 (2004)
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[Publications] Kudo, C., Kasagi, T.: "Floral sex allocation in Corydalis ambigua populations visited by different pollinators"Ecoscience. (印刷中).
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[Publications] Wada, N., Nakai, Y: "Germinability of seeds in a glacial relict Dryas octopetala var. asiatica : Comparison with a snowbed alpine plant Sieversia pentapetala in a middle-latitude mountain area of central Japan"Far Eastern Studies. (印刷中).
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[Publications] Caswell H., Takada, T., Christina, C.M.: "Sensitivity analysis of equilibrium in density-dependent matrix population models"Ecological Letters. (印刷中).