2003 Fiscal Year Annual Research Report
植物培養細胞の馴化(ハビチュエーション)の分子機構の解明
Project/Area Number |
13440237
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 敏行 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10012519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 生郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (40189288)
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Keywords | 馴化 / オーキシン / タバコ培養細胞株BY-2 / 糖タンパク質 / オーキシン信号伝達 / クロマトグラフィー / 細胞分裂 |
Research Abstract |
本研究の目的は、オーキシン独立栄養のタバコ2B-13細胞の分泌する、オーキシン欠乏で細胞分裂を停止したBY-2細胞に細胞分裂を誘導する物質の決定であるが、究極的には1942年にR.Gautheretによって発見された現象でありながら、その機構がほとんど明らかにされていない馴化(ハビチュエーシヨン)の分子機構について明らかにすることである。前年度までに、2B-13株の分泌する細胞分裂誘導(以下CDFと略す)として30kDa糖タンパク質が同定された。また、同様な性質を持つ糖タンパク質はBY-2細胞にも見出されたが、それは30kDaではなく、25kDaと40kDaであった。 今年度は、精製の順序として、ヒドロキシアパタイト、アフィニティーカラム、ゲル濾過クロマトグラフィー法により目指す物質が精製でき、その結果SDS-PAGEで単一バンドとなることが確定したので、更に糖とタンパク質の結合様式を決定することに力を注いだ。その結果、まず、ConAと特異的に結合することが判明した。根拠は、methyl-α-D-glucopyranosideによりConAより解離することからであった。そこで、Glycosidease F、Endo-acetylglucosaminidase処理を行ったところ、Glycosidease Fによってのみ、この糖タンパク質の細胞分裂誘導活性が無くなることが判明した。従って、糖鎖はN-glycoside結合により、タンパク質のアスパラギンに結合すると推定された。また、これらのタンパク質構造解析に入っており、トリプシン処理の後、TOF-MSにかけることによりアミノ酸配列の決定を行っているが、CDFは、塩基性アミノ酸であるリジンやアルギニンが多く含まれることが判明した。オーキシンの信号伝達系にあって、オーキシンの下流にあると予想されるこれらのタンパク質は、いずれもこれまでに知見のない新奇物質であり、オーキシン信号伝達における新しい経路の提案が出来たと考えている。
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[Publications] Kumagai, F. et al.: "γ-Tubulin distribution during cortical microtubule reorganization at the M/G1 interface in tobacco BY-2 cells"Eur.J.Cell Biol.. 82. 43-51 (2003)
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[Publications] Kuwabara, A. et al.: "Effects of ethylene and abscisic acid upon heterophylly in Ludwigia arcuata (Onagraceae)"Planta. 217. 880-887 (2003)
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[Publications] Nagata, T. et al.: "Tobacco BY-2 Cells : The Present and Beyond"In Vitro Cell.Dev.Biol.-Plant. (In press). (2004)
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[Publications] Sano, T. et al.: "Block points in the cell cycle progression of plant cells : Deduced lessons from tobacco BY-2 cells"Biotechnology in Agriculture and Forestry. 53. 149-159 (2004)
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[Publications] Nagata, T., Tabata, S.: "Brassicas and Legumes : From Genome Structure to Breeding"Springer-Verlag(Germany). 268 (2003)
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[Publications] Nagata, T., et al.: "Tobacco BY-2 Cells"Springer-Verlag(Germany). 347 (2004)
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[Publications] 永井和夫, 富田房男, 長田敏行: "細胞工学の基礎"東京化学同人(印刷中). (2004)