2002 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアの母性遺伝:雄性ミトコンドリア排除機構の分子細胞形態学的研究
Project/Area Number |
13440246
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 重行 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (70161338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 幸大 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (40323448)
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Keywords | 真正粘菌 / 変形体 / ミトコンドリア / 母性遺伝 / mtDNA / 配偶子 / ヒラアオノリ / ヒロハノマンテマ |
Research Abstract |
本研究では、真正粘菌、緑藻ヒラアオノリ、高等植物ヒロハノマンテマおよびクロボ菌を用いて、原始的な同型配偶子生殖から異型配偶子生殖を経て花粉生殖の高等植物へ至る進化過程で、ミトコンドリアの遺伝様式とそれにともなう雄性ミトコンドリアの排除機構がいかに変遷したのかを分子細胞形態学的に解析した。特に、雌雄同型配偶子のモデル生物として用いた真正粘菌Physarum polycephalumでは、ミトコンドリアの遺伝様式と交配型との関係を調査した。真正粘菌は異なる交配型の粘菌アメーバが接合し倍数体の変形体となる。接合子内の片親由来のmtDNAが、短時間で選択的に分解され、およそ30個ある接合子のミトコンドリアのうちの約半数で、ミトコンドリア核が同時に縮小しはじめ30分で完全に消失することを明らかにした。真正粘菌の主な交配型はmatAで、1〜16の複対立遺伝子が知られている。matA1、2、11、12、15、16の12株を60通りの組合せで交配し、ミトコンドリアが片親遺伝せず両性遺伝する交配組合せがあることを見出した。両親由来のmtDNA量比を調べるため、この両性遺伝した若い変形体から、交配に用いた両親のmtDNAの多型部位をPCR法で増幅し、両親由来のmtDNA量比が1:1から10000:1の間で大きく揺らいでいることを見出した。この比が接合に用いた粘菌アメーバのどちらの側に偏るかについては、片親遺伝した個体と同様にmatAの組合せによって決定されていた。両性遺伝にさえもmatAの複対立遺伝子に一定のヒエラルキーがあり、ヒエラルキーによるmtDNA量比の揺らぎはmtDNAの不完全な分解によって起こることが明らかとなった。この分解には、Mn^<2+>要求性で時期特異的に発現するDNA分解酵素が、直接関与していることを明らかにしたのも今回の重要な研究実績の一つである。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Takano, H.: "Characterization of putative fusogen encoded in a mitochondrial in a mitochondrial plasmid of Physarum polycephalum"J. Plant. Res.. 115. 255-261 (2002)
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[Publications] Miyazawa, Y.: "Isolation, and expression of novel starch-storing cell specific gene containing KH RNA binding domain from tobacco cultured cells BY-2"J. Exp. Bot.. 53. 2451-2452 (2002)
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[Publications] Uchida, W.: "Distribution of internal telomere-like repeats and their adjacent sequences in a dioecious plant, Silene latifolia"Chromosoma. 111. 313-320 (2002)
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[Publications] Obara, M.: "A plant Y chromosome-STS marker encoding a degenerate retrotransposon"Genes Genet. Syst.. 77. 393-398 (2002)
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[Publications] Yamamoto, M.: "The relationship between presence of a mother cell wall and speciation the unicellular micro alga Nannochloris"J. Phycol.. 39. 172-184 (2003)
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[Publications] Moriyama, Y.: "Rapid, Selective Digestion of Mitochondrial DNA in accordance with the matA Hierarchy of Multiallelic Mating-Types in the Mitochondrial Inheritance of Physarum polycephalum"Genetics. (in press). (2003)
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[Publications] 森山陽介: "植物工学別冊17、ミトコンドリアの動態と遺伝"秀潤社. 130-138 (2002)