2001 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波による細胞内凍結の制御と凍結保存技術への応用
Project/Area Number |
13450086
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
鶴田 隆治 九州工業大学, 工学部, 教授 (30172068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越野 英和 九州工業大学, 工学部, 教務職員 (60145167)
谷川 洋文 九州工業大学, 工学部, 助手 (80197524)
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Keywords | 凍結保存 / 細胞内凍結 / マイクロ波 / 水分子 / 分子動力学 / 水素結合 / スラリー / アモルファス |
Research Abstract |
実験試料として塩水に生活するエビの仲間であるブラインシュリンプ(正式名称:アルテミア・サリーナ)を用い,2%の塩水を外部溶液として生物顕微鏡下における凍結観察実験を行った.ここで,マイクロ波による凍結制御の可能性を明らかにする観点から,周波数2.45GHz,出力20Wのマイクロ波を照射し,冷却凍結過程における氷晶の発生と成長に及ぼすマイクロ波の影響を観察した.その結果,外部溶液の凍結過程に及ぼすマイクロ波の影響として,毎分1.4℃の冷却速度と-4℃〜-10℃の範囲での植氷条件では,マイクロ波を照射した場合に少ない凝固潜熱量の放出があることが温度履歴から検出され,画像観察からも氷晶の成長速度が速いことが観察された.また,植氷温度の低下によって,樹枝状の氷晶から,流動性のあるスラリー状の氷に変化していることも観察され,この結晶形態の変化が生体に及ぼす影響に差をもたらす可能性のあることがわかった.なお,試料の生死判定も実施したが,今回の条件下では生存率はゼロで合った. 次に,氷晶形成過程に及ぼすマイクロ波照射の影響の分子動力学解析を行った.分子モデルに剛体分子モデルであるSPC/Eモデルを使用し,平均自己拡散係数や平均水素結合数から,SPC/Eモデルの相転位温度が従前に用いたSPCモデルに比べて20℃高くなるものの,実際の水に比べてまだ差のあることがわかった.さらに,冷却速度が大きくなってしまうという計算上の制約から,非晶質のアモルファスとなり,氷結晶の形成過程の観察にはなお工夫の必要があることが指摘された.しかしながら,アモルファス状態の水素結合数や水素結合の寿命を評価すると,マイクロ波を照射すると,温度上昇させることなく水素結合を分断する作用のあることが確認された.
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