Research Abstract |
本研究では複数の噴流の相互干渉を利用して,その大規模な渦構造を瞬時に捉え,同時に噴流出口近傍での微小擾乱の制御を実時間に行うことによって,噴流群全体に流体の混合に対する機能性を付与する方法を確立する.本研究では,作動流体を水としたもの,空気としたものの2つに大別して行った. 水流に関する実験系に関しては,2次元平行2噴流を用い,衝突加熱平板上の熱伝達分布の制御を行った.渦対の分離やカスケード過程の加速といった渦構造の変化を誘引するために,ノズル出口の両側に,微細な切り込みを設け,水の吹き出し吸い込みによる微少撹乱を与える装置を作成し,微小擾乱の周波数,位相差が熱伝達分布に及ぼす励起の影響を調べた.その結果,位相差の影響は衝突距離が小さい場合に有効であり,位相の遅れている噴流は壁面噴流に妨げられ壁面へ衝突することができないため,位相が進んでいる噴流側で熱伝達が促進されることがわかった.このような効果は片側噴流のみ励起した場合にも観察され,左右の噴流を交互に励起することで,微小擾乱周波数より長い時間スケールにおいて,局所熱伝達率の高い部分を非定常に移動することに成功した. 空気流に関しては,主に乱流混合の制御に向けて実験を行った.3本の2次元噴流群装置を作成し,中心噴流に微小擾乱を付与することによって,下流域の濃度分布制御を試みた.周波数,速度比などの制御パラメータをどのように変化させればよいかといった流れ場の状況(入力)とそれに対する操作(出力)を表すマトリクスを作成するために,様々な初期条件に対する乱流の秩序渦構造と濃度分布の変化を定量的に観察した.PIVによる速度場と粒子数密度から算出される濃度場が同時計測可能なシステムを構築し,平均速度場,濃度場,乱流物質流束を計測した.中心噴流の励起は,再循環領域を通して,左右の噴流にも周期的な渦を誘引し,下流の中心噴流との混合域において,拡散促進に大きく寄与することがわかった.また,速度比を変化させることにより,定常状態においては濃度の高い部分を左右に偏せられることがわかった. フィードバック制御を行うために,高時間分解能で時系列計測が可能な熱線センサを用いて,速度分布を計測し,大規模渦の情報を抽出する必要がある.そこで,速度を2方向成分に分解して計測できるXプローブ熱線センサを横一列に3本配置し,空間微分を取ることで,渦度情報を時系列に計測できる制御用センサを開発した.PIVにより計測された渦度分布と比較し,このセンサにより良好に渦度が検出できることを確認した.
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