2002 Fiscal Year Annual Research Report
生物絶滅確率を指標とする水域環境保全手法の確立に関する基礎的研究
Project/Area Number |
13450215
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楠田 哲也 九州大学, 工学研究院, 教授 (50037967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山西 博幸 佐賀大学, 低平地研究センター, 助教授 (20240062)
大石 京子 九州大学, 工学研究院, 助手 (20110835)
久場 隆広 九州大学, 工学研究院, 助教授 (60284527)
巖佐 庸 九州大学, 理学研究院, 教授 (70176535)
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Keywords | カワスナガニ / 生物保全 / 絶滅確率 / 北川 / 感潮河川 / 選好性 / 生息条件 / 河川改修 |
Research Abstract |
北川感潮域におけるカワスナガニの個体数変化を把握し、生息環境を明らかにするために、縦断方向と横断方向の生息分布に関する現地調査、存在形態に関する調査、および掃流力と幼生の成長過程に関する室内実験を実施した。得られた主要な結果は以下の通りである。 1)北川におけるカワスナガニは河口から4.8km-6.4kmの区間に分布する。右岸の方が左岸より生息密度が高く、河道構造と生息適地の関係を明らかにした。 2)常時淡水にさらされているところには本年もカワスナガニは存在しなかった。 3)個体は3月から5月にかけて増加し、それ以降は減少する傾向にあった。この間の減少率は月当たり6.5%であった。 4)11月から急激に個体数は減少する。死滅によるものと推定される。カワスナガニはTP-2mを下回るところには生息していない。 5)雌の比率は52%で、年間を通じてほぼ一定であった。このことは孵化時に性が一定比率で決まることを示唆していると思われる。 6)カワスナガニはTP-2mを下回る箇所には生息していない。このことは高塩分を選択しないことを示す。 7)カワスナガニは25度を超える水温のところには存在していなかった。 8)カワスナガニの限界掃流力は1.2Pa程度である。カワスナガニは、通常河床の粒子中に隠れるので、中礫程度の場合、カワスナガニの限界掃流力は河床粒子の限界掃流力に等しい。 9)カワスナガニの卵は孵化するのに2ヶ月を要する。 10)ゾエア1齢の大きさは甲長約0.45mm、両棘間隔約0.75mm、全長約0.80mmであった。 11)脱皮による成長率は1.17程度である。このことは生体になるために10回以上の脱皮が必要なことを示している。 12)水理学的モデル化によりシミュレーションを通して生息適地と選好性の関係を示す準備を終えることができた これらの結果を基に、今後ステージマトリックスとポピュレーションベクトルを完成させ、カワスナガニ保全のための工学的手法を完成させる予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 日宇洋平, 呉一権, 楠田哲也, 平田将彦: "北川感潮域におけるカワスナガニの分布特性と固体数変動および環境条件"環境工学研究論文集. 39. 467-475 (2002)
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[Publications] Shoji, H., Y.Iwasa, A.Mochizuki, S.Kondo: "Directionality of stripes formed by anisotropic reaction-diffusion models"Journal of Theoretical Biology. 214. 549-561 (2002)
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[Publications] Nakamura, M., Y.Iwasa, J.Nakanishi: "Extinction risk of DDT to herring gull (larus argentatus) populations"Environmental Toxicology and Chemistry. 21. 195-202 (2002)
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[Publications] Satake, A, Y.Iwasa: "Spatially limited pollen exchange and long range synchronization of forest trees"Ecology. 83. 993-1005 (2002)
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[Publications] Satake, A, Y.Iwasa: "The synchronized and intermittent reproduction of forest is mediated by the Moran effet, only in association with pollen coupling"Journal of Ecology. 90. 830-838 (2002)
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[Publications] Yokomizi, H., J.Yamashita, Y.Iwasa: "Optimal conservation effort for a population in a stochastic environment"Journal of Theoretical Biology. 220. 215-231 (2003)
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[Publications] Kurosawa, G., Y.Iwasa: "Saturation of enzyme kinetics in circadian clock models"Journal of Biological Phythms. 17. 568-577 (2003)
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[Publications] 楠田哲也, 巌佐庸共編: "生態系とシミュレーション"朝倉書店. 172 (2002)