アモルファス窒化炭素薄膜のすぐれたナノ耐摩耗性機構の解明

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13450293
• Research Institution: Nagoya University
• Principal Investigator: 高井 治 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40110712)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 河田 一喜 オリエンタルエンヂニアリング(株), 研究開発部, 主幹研究員 ; 井上 泰志 環境量子リサイクル研究センター, 助教授 (10252264) ; 杉村 博之 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (10293656) ; 手嶋 勝弥 大日本印刷(株), 中央研究所, 研究員
• Keywords: 窒化炭素 / アークプラズマ / アモルファス / 超硬質材料 / ナノインデンテーション / シールド型アークイオンプレーティング / 耐摩耗特性 / 化学結合状態

Research Abstract

本年度の研究成果は以下のとおりである。
(1)ラマンスペクトル測定システムの構築:アモルファス窒化炭素(a-C:N)薄膜中の化学結合状態,特にC-Nネットワーク中のsp結合組成の分析に必要なラマンスペクトル測定装置および光学アタッチメントを,設備備品として購入した.本格的な測定は来年度以降に行う.
(2)a-C:N薄膜の作製:本年度は,シールド型アークイオンプレーティング法において重要な成膜パラメータのひとつである基板バイアスに焦点を当て,作製膜の機械的特性(硬度,耐摩耗特性)および化学結合状態の基板バイアス依存性を調査した.直流バイアス印加時には,バイアス値を0〜-500Vで変化させ,パルスバイアス印加時には,Duty比を50%一定として,バイアス値を0〜-500V,周波数を10〜500Hzにそれぞれ変化させて成膜を行った.炭素源として高純度グラファイトターゲット,窒素源として高純度窒素ガスを用いた.
(3)a-C:N薄膜の機械的特性評価:直流バイアスに対しては,0〜-500Vの範囲において,硬度は-25Vで極大値16.5GPaとなり,バイアス値が高くなるにつれて緩やかに減少した.一方,耐摩耗特性評価における摩耗痕深さは,-150Vで極小を示した.これらの実験結果は,X線光電子分光分析により得られた,作製膜の化学結合状態と相関があり,硬度にはsp^3-C,C-NおよびC=N結合が,耐摩耗特性にはC-N結合が関係していることがわかった.パルスバイアス印加の場合,全体としては直流バイアス印加時とほぼ同様の依存性を示したが,-25Vにおける硬度の鋭い極大ピークを示さなかった.したがって,本研究で行った成膜条件の範囲内では,バイアス印加をパルス化することによる,機械的特性の向上は認められなかった.
(4)a-C:N薄膜の電界電子放射特性評価:作製膜の電界電子放射特性は,成膜時に印加したパルスバイアスの周波数に対して依存性を示した.しきい値電界は,バイアスパルス周波数200Hzにおいて5V/μmの最小値を,また最大電流密度は,同50Hzにおいて20A/cm^2を示した.

Research Products

• [Publications] K. H. Lee, Y. Inoue, H. Sugimura, O. Takai: "Correlation Between Wear-Resistance and Chemical Structure of CN_x Films Synthesized by Shielded Arc Ion Plating"Proc. Frontiers of Surface Engineering 2001. 198 (2001)
• [Publications] K. H. Lee, H. Sugimura, Y. Inoue, O. Takai: "Nanomechnical and Trobological Characterization of Amorphous Carbon Thin Films Synthesized by Shielded Arc Ion Plating"Abst. Second International Symposium on Biomimetic Materials Processing. 60 (2002)
• [Publications] H. Tamoto, K. H. Lee, H. Sugimura, O. Takai: "Amorphous Carbon Nitride Synthesized by Arc Ion Plating: Electron Field Emission Characteristics"Proc. The XXVth International Conference on Phenomena in Ionized Gases. 2. 131-132 (2001)
• [Publications] T. Kawaguchi, H. Tamoto, K. H. Lee, H. Sugimura, O. Takai: "Hardness of Amorphous Carbon Nitride Thin Films Prepared by Shielded Arc Ion Plating: Effects of Substrate Bias"Abst. Frontiers of Surface Engineering 2001. 58 (2001)
• [Publications] H. Tamoto, K. H. Lee, H. Sugimura, O. Takai: "Electron Field Emission from Carbon Nitride Thin Films Synthesized by Shielded Arc Ion Plating with Applying a Pulsed Substrate Bias"Abst. Frontiers of Surface Engineering 2001. 118 (2001)