2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13450384
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西出 宏之 早稲田大学, 理工学部, 教授 (90120930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮坂 誠 日本学術振興会, 特別研究員(D3)
小柳津 研一 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 講師 (90277822)
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Keywords | 空気酸化重合 / ポリチオフェン / 頭-尾規制 / ポリラジカル / 分子内環化 / ベンゾチオフェン / 共役ポリマー / ポリフェニレン |
Research Abstract |
本研究は、ポリチオフェン誘導体における頭-尾配列を完全制御する方法を確立し、3-位置換基の規則正しい配列に基く新しい物性を開拓することを目的とする。空気酸化重合に関する従来知見をもとに、チオフェン環の頭-尾配列と立体配座を同時に規制できる重合法を確立し、主鎖平面性に基づく共役系の拡大を実証する。具体的には、チオフェン環の3-位に安定ラジカル基を導入し、ポリチオフェン連鎖における不対電子の規則正しい配列に基く磁気的相互作用を定量化するとともに、頭-尾率を精密決定するためのプローブにも利用する。また、頭-尾規制されたポリ(アルキルスルフィニルフェニレン)から出発し、分子内環化反応を経てベンゾチオフェン骨格へと誘導することにより、共役平面性の高いポリチオフェン誘導体の合成とその高次構造制御の方法を確立する。 (1)安定ラジカルを有するポリチオフェンの合成と構造制御 3-位にフェニルガルビノキシル基および2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシル基を有するチオフェン類を合成し、頭-尾率の高いポリチオフェン誘導体に変換するための酸化重合条件について調べた。低温下で穏和な酸化剤(バナジル触媒を用いた空気酸化)を利用すると置換基の立体効果が重合過程でモノマーの空間配置を決める支配的因子となることを突止め、頭-尾率92%以上の高分子量体を得ることができた。ポリラジカルの磁気的性質は頭-尾配列を反映し、共役主鎖を介した磁気的相互作用に基く常磁性(S=1/2)と、僅かな構造欠陥に対する磁化率の鋭敏な変化が観測された。 (2)チオフェン前駆体の合成と分子内環化反応 強酸性下における芳香族スルホキシドの脱水縮合反応をチオフェン環形成に用いるため、本年度はスルホキシドの分子内環化についてモデル反応を用いて検討した。まず二量体モデルとして、2-メチルスルフィニル-1,1'-ビフェニルの分子内環化反応により、ベンゾチオフェンが定量的に得られることを明らかにした。次いでポリマー反応のモデルとして、ポリ(オキシ-2-メチルスルフィニル-1,4-フェニレン)の分子内環化により、構造欠陥なくフェノキサチイニウム型連鎖を得るための条件(反応温度、酸性度、濃度等)を整理した。 ポリチオフェン骨格の前駆体として、メチルスルフィニル基を有するポリフェニレン類を対象に定めた。モノマーとして2-位にメチルスルフィニル基を導入したジブロモベンゼンおよびそのホウ酸エステル誘導体を合成し、Pd触媒による頭-尾規制重合について予備的に確かめ、次年度に分子内環化によるポリチオフェンへの変換について展開するための足掛りを得た。
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