2002 Fiscal Year Annual Research Report
Furovirus属植物RNAウイルスの複製、病原性および伝搬性に関する研究
Project/Area Number |
13460020
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
白子 幸男 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 教授 (90143023)
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Keywords | Furovirus属 / ムギ類萎縮ウイルス / RNAリアソートメント / 感染性cDNAクローン / オオムギ葉肉プロトプラスト / ウイルスRNA複製 / 病原性 / 伝搬性 |
Research Abstract |
Furovirus属のタイプ種であるムギ類萎縮ウイルス(Soil-borne wheat mosaic virus、SBWMV)は2分節性のプラス鎖RNAウイルスで、日本、米国および英国分離株は生物学的性状が同一だが、タンパク質のアミノ酸配列の類似性が8割前後と他の植物RNAウイルスと比べて著しく低い。昨年度は日本分離株の感染性cDNAクローンを用いたオオムギ葉肉プロトプラストの感染系を確立し、RNA2に生じる欠失変異の特徴と病原性との相関を明らかにした。今年度はさらに米国分離株および英国分離株について感染性cDNAクローンを構築し、3分離株間で試験管内合成感染性RNA1およびRNA2を組換えてオオムギ葉肉プロトプラスト、局部病斑宿主Chenopodium quinoa、全身感染宿コムギ(品種フクホ)に接種し、3分離株間のRNA1とRNA2の感染性における親和性を検討した。その結果、全ての組み合わせにおいてオオムギ葉肉プロトプラストではウイルス複製が検出され、細胞レベルでは3分離株は同一の性状を示した。一方、植物体を用いた接種試験では米国分離株RNA1と日本分離株および英国分離株RNA2の組み合わせでは感染性が認められなかったが、その他の組み合わせではC. quinoaにおける局部病斑形成とコムギにおける全身感染性が認められた。RNA1は細胞間移行タンパク質をコードするため、米国分離株の移行タンパク質が日本分離株および英国分離株の細胞間移行に十分に機能しないものと考えられた。また、オオムギ葉肉プロトプラスト接種試験によりRNA2にコードされた高システイン含タンパク質はRNA1およびRNA2の複製に必須ではなく、ウイルス感染性における20℃以下の低温要求性はRNA1複製因子によって決定されることを実験的に証明した。本研究で得られた成果と確立した実験系を用いてFurovirus属ウイルスの複製と病原性を詳細に解析することが可能となり、ウイルス病防除を目標として今後さらに研究を進める必要性が高まった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Masaki Miyanishi: "Reassortment between genetically distinct Japanese and US strains of Soil-borne wheat mosaic virus : RNA1 from a Japanese strain and RNA2 from a US strain make a pseudorecombinant virus"Archives of Virology. 147. 1141-1153 (2002)
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[Publications] Shuichi Ohsato: "The optimal temperature for RNA replication in cells infected by Soil-borne wheat mosaic virus is 17 ℃"Journal of General Virology. 84. 995-1000 (2003)