2003 Fiscal Year Annual Research Report
長距離移動性昆虫の生理的・遺伝的特性と地理的変異及び飛来源の解明
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13460023
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤條 純夫 佐賀大学, 農学部, 教授 (50011911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉賀 豊司 佐賀大学, 農学部, 助手 (00312231)
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Keywords | ハスモンヨトウ / トビイロウンカ / 移動 / 飛翔エネルギー源 / 下層ジェット気流 / トリアシルグリセロール / 地理的変異 / 気象 |
Research Abstract |
本年度の研究では、特にハスモンヨトウの海外からの移動性を中心に研究を継続した。国内6カ所、中国3カ所、韓国4カ所、台湾、フィリピン各1カ所に同じ組成からなるフェロモントラップを設置し、日毎の雄成虫のトラップへの誘引数を比較し、それらの結果と気象要因との関連、特に850hPaにおけるアメダスデータから推定した下層ジェット気流の後退流跡線解析について検討を行った。その結果、3-6月の梅雨前線が到来する前後の時期に、台湾、中国南中部から発生した下層ジェット気流が到達した時にほぼ一致して南西諸島、九州各地で雄成虫がトラップに大量に誘引されることが明らかになった。さらに、初夏から秋にかけてこれらの地域に台風が接近した時にも突発的に雄成虫が誘引された。さらに、9-10月には、中国北部、朝鮮半島を経由した下層ジェット気流が日本に到達するが、その時期に一致して、九州、中国、北陸地方での雄誘引数が顕著に増加することも判明した。そうした下層ジェット気流の発生源と推定される地域に設置したトラップにも、時期的に一致して雄成虫の誘引が認められた。こうした数年間に渡る結果に基づき、ハスモンヨトウは、梅雨前線、台風、秋雨前線に関連する風に乗って日本に飛来すると結論した。産地が異なるハスモンヨトウを比較することから、飛翔能力、性フェロモン放出時期、性フェロモン組成においても、地理的変異が生じていることが判明し、それらを指標にすれば、飛来源を特定することも可能と期待された。さらに、熱帯及び亜熱帯アジアにおけるトラップへの雄成虫の誘引数が温帯アジアのものに比べてはるかに少なく、そうした地域で採集された幼虫の多くは、コマユバチ科の蜂Microplitis manilaeによって寄生されていることから、ハスモンヨトウの移動は、この寄生蜂からのエスケープとして生じているとの説を提起した。 特定の翅型、体色選抜によって得られた4つのトビイロウンカ系統を用いたディファレンシアルディスプレイ法によるmRNAの比較から、いくつかの系統特有の遺伝子の存在が確認された。現段階では、それらの遺伝子の機能については不明であるが、翅型、体色、さらには生活史特性の制御に関係する遺伝子の探索のための大きな手がかりを掴んだと思われる。
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[Publications] Hironaka, M: "the directional homing behaviour of the subsocial shield bug, Parastrachia japonensis (Heteroptera : Cydnidae) under different photic conditions"-Zoological Science. 20・4. 423-428 (2003)
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[Publications] Murata, M: "Flight capability and fatty acid level in triacylglycerol of long-distance migratory adults of the common cutworm, Spodopera litura."-Zoological Science. 21・2. 181-188 (2004)
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[Publications] Sakamoto, R: "Effects of larval diets on flight capability and flight fuel in adults of the common cutworm, Spodoptera litura"-Applied Entomology and Zoology. 39・1. 133-138 (2004)