2002 Fiscal Year Annual Research Report
植物における新しい二糖配糖体特異的グリコシダーゼファミリーの解明
Project/Area Number |
13460049
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂田 完三 京都大学, 化学研究所, 教授 (20087563)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 文一 京都大学, 化学研究所, 助手 (50324695)
水谷 正治 京都大学, 化学研究所, 助手 (60303898)
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 助教授 (80199075)
加藤 博章 理化学研究所, 播磨研究所, チームリーダー (90204487)
|
Keywords | β-プリメベロシダーゼ / ジグリコシダーゼ / 二糖配糖体特異的加水分解酵素 / グリコシダーゼファミリー / フルカチン / ムシカリノキ / アフィニティー吸着体 / 生体防御 |
Research Abstract |
本研究では、植物界に"新しい二糖配糖体特異的グリコシダーゼファミリー"が存在することを明らかにし、植物におけるこれら二糖配糖体特異的グリコシダーゼの本来の機能解明を目指し、下記の研究を行った。 (A)二糖配糖体特異的グリコシダーゼ(ジグリコシダーゼ)の触媒機能および立体構造の解明 1)基質特異性の解明:前年度に合成した種々の二糖配糖体に加えて、β-isoprimeverosideおよび6-O-acetylおよび6-O-malonyl β-D-glucopyranosidesを合成し、グリコン部に対する基質特異性の詳細を明らかにする準備を整えつつある。 2)グリコシルアミジン誘導体を利用したアフィニティークロマトによるチャ葉β-プリメベロシダーゼの精製:β-プリメベロシルアミジンをリガンドにしたアフィニティー吸着体は残念ながらチャ葉β-プリメベロシダーゼを吸着することができなかったが、β-グルコシルアミジンから調製したアフィニティー吸着体はチャ葉β-プリメベロシダーゼの精製時に挙動を共にするために分離が困難であったβ-グルコシダーゼを選択的に吸着することが明らかとなり、この吸着体を用いることでチャ葉β-プリメベロシダーゼの精製を簡便化することができることが明らかとなった。 3)β-プリメベロシダーゼのX線結晶構造解析 β-プリメベロシダーゼの大量調製:β-プリメベロシダーゼを大量に調製するため、(1)チャ葉からの大量精製、(2)昆虫細胞による大量発現、の2つの方法を検討した結果、結晶化に必要な酵素量を得るためには精製法、発現法を改良する必要があることが解った。一方、新たにムシカリノキからクローニングしたジグリコシダーゼはプリメベロシダーゼとは異なり翻訳後糖鎖修飾を受けず、大腸菌での大量発現が可能であるため、方針を変更して本酵素の大量調製と結晶化を目指して研究を進めている。 (B)植物における"新しいジグリコシダーゼファミリー"の確立と機能の解析 1)その他のジグリコシダーゼ遺伝子のクローニング:ムシカリノキに存在する二糖配糖体フルカチンを加水分解するジグリコシダーゼのクローニングに成功した。大腸菌で発現させた結果、本酵素は二糖配糖体を特異的に加水分解することが解った。また多数のファミリー1グルコシダーゼとアミノ酸配列を比較したところ、予想どうり本酵素は進化系統樹上プリメベロシダーゼとクラスターを形成した。本研究により、ジグリコシダーゼはファミリー1の中に新しいサブファミリーを形成することが明らかになった。 2)ジグリコシダーゼの植物体中での機能の解明:プリメベロシダーゼ抗体を用いて本酵素のチャ葉細胞内存在部位を調べた結果、本酵素は新芽の特に若い葉に多く分布し葉令が進むに連れて減少しており、また葉肉細胞の細胞外(細胞壁、細胞間隙)に局在していることが明らかになった。香気前駆体としてのβ-プリメベロシドのアグリコンには抗菌性を示すテルペンアルコールや病害抵抗性を誘導するサリチル酸メチルなどが含まれることから、本酵素はチャ葉中の細胞外に恒常的に存在し、病害虫食害時にこれら配糖体を加水分解して生体防御物質を遊離すると考えられる。
|
-
[Publications] Mizutani, M., et al.: "Cloning of 15-primeverosidase, a key enzyme in tea aroma formation from Camellia sinensis var. sinensis cv. Yabukita"Plant Physiology. 130. 2164-2176 (2002)
-
[Publications] 平竹潤, 坂田完三: "選択的β-グリコシダーゼ阻害剤の分子設計とその応用…テーラーメードにグリコシダーゼを狙い撃ちできるか?"化学と生物. 40・6. 352-354 (2002)
-
[Publications] 坂田完三: "茶の香気生成機構の研究から植物グリコシダーゼ研究の新展開へ"日本食品新素材研究会誌. 5・2. 9-17 (2003)
-
[Publications] Sakata, K., Mizutani, M., et al.: "Diglycoside-specific, glycosidases : Recognition of Carbohydrates in Biological Systems"Methods in Enzymology. 363(in press). (2003)
-
[Publications] Hiratake, J., Sakata, K.: "Glycosylamidines as potent selective and easily accessible glycosidase inhibitors and their application to affinity chromatography"Methods in Enzymology. 363(in press). (2003)