2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13460063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丹下 健 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20179922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 福壽 鳥取大学, 農学部, 教授 (60112322)
阪上 大翼 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90313080)
益守 眞也 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (50282702)
本間 環 鳥取大学, 農学部, 助手 (90294347)
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Keywords | 浸透ポテンシャル / シンク-ソース関係 / スギ / 耐凍性 / P-V曲線法 / 地温 / 植物ホルモン / フェノロジー |
Research Abstract |
常緑樹は、葉の耐凍性を高めることで冬季の低温障害を回避しているが、季節はずれの遅霜や早霜によって甚大な被害を受ける。また、落葉樹も冬芽が動き始めてから遅霜などの低温にさらされることで障害を受ける。近年、温暖化などの気候変動にともない異常気象が頻発しており、樹木がどのような過程で耐凍性を獲得し、また喪失するかを明らかにすることは、異常気象の森林への影響を評価する上で重要である。本研究では、地温(根の温度)と気温(葉の温度)の組み合わせを変えて栽培した樹木の葉の溶質濃度(浸透ポテンシャル)の変化から、それぞれの器官の温度環境と耐凍性獲得・喪失との関係について解析することを目的とした。本年度は、スギ苗木を材料として、秋から冬にかけて地温を下げた処理区、地温を高めた処理区、葉温を高めた処理区、苗木全体の温度を高めた処理区を設けて、葉の浸透ポテンシャルをP-V曲線法により測定し、その経時変化を比較した。その結果、地温が5℃以下になると地上部の温度条件によらず葉の浸透ポテンシャルが急激に低下し始めることが明らかになった。また、地温が5℃以下の場合には葉を暖めても、浸透ポテンシャルが上昇することはなかった。浸透ポテンシャルの低下の原因を探るため、浸透調節物質の経時変化を調べたところ糖が主要な浸透調節物質となっていることがわかった。そこで、寒冷紗によって葉を被陰したところ、光を十分に受けている葉に比べて、地温の低下に伴う浸透ポテンシャルの低下が小さい傾向が認められた。以上の結果から、低温による根の成長抑制(シンク能の低下)によって葉に光合成産物の糖が集積する(相対的なソース能の増大)ことが、耐凍性獲得に影響している可能性が考えられた。
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