Research Abstract |
本年度はまず,カリフォルニア盲導犬協会にて育成,訓練された盲導犬候補個体からの血液採材と気質評価のための行動観察シートの収集を行った。対象動物は,ラブラドールレトリバーが128頭,ゴールデンレトリバーが19頭,両交雑種が20頭,ジャーマンシェパードが22頭であり,そのうち82頭が盲導犬最終審査に合格し,74頭が不合格,33頭が医学的疾患により不適格とされた。これらの動物の訓練時行動観察より,攻撃性と不安傾向を抽出・数値化して評価したところ,盲導犬最終審査の過程では攻撃性が重要視されていることが明らかとなった。続いて東京大学ベテリナリーメディカルセンターより供与されたイヌの扁桃体よりTotal RNAを抽出してcDNAを作製し,それを鋳型として候補遺伝子のクローニングを行った。現時点にてヒトで気質や精神疾患と遺伝子多型が報告されている候補遺伝子のうち,モノアミンオキシダーゼA, B, セロトニントランスポーター,セロトニン1B受容体,2C受容体,ドパミントランスポーター,ドパミンD2受容体,D3受容体,トリプトファンヒドロキシラーゼ,カテコール-0-メチルトランスフェラーゼ,チロシンヒドロキシラーゼなどの遺伝子断片のクローニングに成功した。また,各候補遺伝子の多型を検索する目的で,行動学的に気質が評価されている7犬種(ゴールデンレトリバー,ラブラドールレトリバー,ウエストハイランドホワイトテリア,ミニチュアシュナウザー,マルチーズ,柴犬,秋田犬)について開業獣医師の協力を得て血液を入手し,白血球よりゲノムDNAを抽出することで各犬種50頭を目標としてイヌ遺伝子バンクの作製を試みた。候補遺伝子のクローニングおよびイヌ遺伝子バンクの作製は現在も継続中である。
|