2001 Fiscal Year Annual Research Report
腸管出血性大腸菌0157の比較ゲノム学的解析とその臨床応用
Project/Area Number |
13470061
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
林 哲也 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (10173014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 真 宮崎医科大学, 医学部, 助教授 (10233214)
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Keywords | 病原性大腸菌O157 / ゲノム多型 / バクテリオファージ / PCR / 菌株識別法 |
Research Abstract |
病原性大腸菌O157菌株のゲノムの多様性の実態を明らかにすること、さらにはその結果を基に、O157集団感染における分子疫学解析のための新しい解析ツールやO157の特異的分離法を開発することを目的として、病原性大腸菌O157堺株のゲノム配列に基づいて、O157ゲノムを約10Kb単位で増幅できるPCRプライマーセットを作製し、これを用いて各種O157株の全ゲノム構造を解析した(whole genome PCR scanning、以下WGPSと呼ぶ)。まず、1998年に日本各地で分離されたO157臨床分離株からXbaIによる染色体切断パターンの大きく異なる10株を選択し、堺株を基準として全ゲノム構造をWGPSで解析した。各O157株で堺株と構造の異なるゲノム領域を全て同定でき(2株はO157ではないことが解析終了後に判明)、WGPSという新しいゲノム解析法がほぼ確立できたといえる。また、解析結果から、O157菌株間には予想以上の多様性が存在し、特にラムダ様プロファージ領域には株間で大きな違いがあることが明らかとなった。多様なO157の出現にはラムダ様ファージが大きく関与していることが示唆される。また、通常のPCR法で解析ができる程度の大きさの多型性を示すゲノム領域も20カ所以上同定できており、今後PCRをベースとした新しい分子疫学解析法を開発する上で、これらは非常に有望な解析ターゲットであるといえる。堺株と構造の異なる領域の配列決定に関しては現在進行中である。PCRで増幅されない領域は、インバースPCR法を用いて該当領域の構造を決定する予定であったが、PCRで増幅されない領域も予想以上に数が多く、サイズも大きかったため、各株のBACライブラリーの作製を行うことにより対応することにした。現在、BACライブラリーの作製が進行中である。なお、これらの解析と平行して、urease遺伝子の大腸菌株間における保有率およびtoxB遺伝子の機能を解析し、その分布や機能の一部を明らかにすることができた。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] Q.B.Tian, et al.: "Specific protein-DNA and protein-protein interaction in the hig gene system, a plasmid-borne proteic killer gene system of plasmid Rts1"Plasmid. 45. 63-74 (2001)
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[Publications] K.Oana, et al.: "Molecular and epidemiological study of the first outbreak of vanB type vancomycin-resistant Enterococcus faecalis in Japan"Jpn.J.Infect.Dis.. 54. 17-22 (2001)
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[Publications] M.Ohnishi, et al.: "Diversification of Escherichia coli genomes : are bacteriophages the major contributors ?"Trends Microbiol.. 9. 481-485 (2001)
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[Publications] I.Tatsuno, et al.: "toxB gene on pO157 of enterohaemorrhagic Escherichia coli O157 : H7 is required for full epithelial cell adherence phenotype"Infect.Immun.. 69. 6660-6669 (2001)
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[Publications] T.Yamaguchi, et al.: "Complete nucleotide sequence of a Staphylococcus aureus exfoliative toxin B plasmid and identification of a novel ADP-ribosyltransferase, EDIN-C"Infect.Immun.. 69. 7760-7771 (2001)
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[Publications] M.Nakano, et al.: "Association of the urease gene with enterohemorrhagic Escherichcia coli strains irrespective of their serogroups"J.Clin.Microbiol.. 39. 4541-4543 (2001)
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[Publications] 大西真, 黒川顕, 林哲也: "腸管出血性大腸菌O157全ゲノム配列決定の意義"蛋白質 核酸 酵素. 46. 1862-1866 (2001)
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[Publications] 大西真, 林哲也: "腸管出血性大腸菌O157:H7"臨床と微生物. 28. 751-758 (2001)
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[Publications] 林 哲也 他: "医科細菌学第3版"南江堂. (2001)
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[Publications] 林 哲也 他: "細菌毒素ハンドブック"サイエンスフォーラム社. 587 (2002)