2002 Fiscal Year Annual Research Report
室内環境化学物質のアレルギー応答変容作用とシックハウス症候群との関連に関する研究
Project/Area Number |
13470078
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
吉田 貴彦 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90200998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中木 良彦 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90322908)
伊藤 俊弘 旭川医科大学, 医学部, 助手 (20271760)
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Keywords | シックハウス症候群 / ホルムアルデヒド / 消化管細菌巣 / 肝サイトカイン応答 |
Research Abstract |
ホルムアルデヒド(HCHO)は、シックハウス症候群(SHS)の主原因の一つとして考えられる。SHSを引き起こす化学物質の体内への進入ルートは主に経気道的曝露が想定されている。一方、一般環境においての化学物質の曝露は経消化管的な部分も大きい。また、養殖魚などの寄生虫駆除のために一部で違法な魚類のホルマリン浴が行われている。こうしたHCHOの使用により残留ないし形態を異にして食品に移行するHCHOが食品とともに摂取される可能性がある。そこで、飲食物を介し経口的に長期にわたって微量のHCHOないし食物に作用し形態を変えても残留し摂取される状況を想定し、雌性B6C3F1マウスを用いたHCHO投与実験系を設定し生体影響について検討した。模擬試料としてHCHO処理を行った動物飼料およびHCHOを添加した蒸留水をマウスに与えて、腸内細菌巣の変化、腸管から吸収された物質が最初に達し解毒の場ともなる肝臓への影響、および外来病原体から生体を防御する免疫機構への影響などを指標として、HCHOによる健康影響の評価について検討を試みた。その結果、糞便中の大腸菌群に関し、低濃度、高濃度HCHO飼料投与群で菌数の有意な減少、高濃度HCHO飲料水群で減少傾向を認めた。一方、嫌気性菌群では、低濃度、高濃度HCHO飼料投与群で有意な菌数の減少を認めたものの、HCHO飲料水投与群には明らかな傾向が見られなかった。LPS投与によって誘導した肝臓でのサイトカイン応答を、in vitroでの薄切肝の培養上清中に産生放出されるTNF-α量をもって観察したところ、低濃度、高濃度HCHO飼料群でコントロール群より減少傾向を示し、HCHO飼料摂取による消化管細菌巣の変化を反映する結果であった。一方、脾細胞幼若化応答およびヒツジ赤血球に対する抗体産生応答などの免疫応答にはHCHO曝露によると考えられる影響は見出されなかった。以上より、経口的なHCHO曝露が生体の消化管免疫等に影響を与えることがわかった。
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