2002 Fiscal Year Annual Research Report
養育環境が神経可塑性および神経増殖に与える影響の分子生物学的研究
Project/Area Number |
13470195
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Research Institution | 山梨医科大学 |
Principal Investigator |
神庭 重信 山梨大学, 医学部, 教授 (50195187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 潤一 山梨大学, 医学部, 助手 (20303422)
工藤 耕太郎 山梨大学, 医学部, 助手 (50345708)
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Keywords | 養育環境 / 学習 / 不安 / 母子分離ストレス / 海馬 / 扁桃体 / 遺伝子 / 神経伝達物質 |
Research Abstract |
1 目的と方法 出生早期の母子分離によりストレスに対し脆弱な個体が育つことが知られている。今回我々は、出生早期のラットに母子分離を行い、母親の養育行動を観察し5週齢に達した時点での不安行動を、プラスメイズテストを用いて行うことによりストレス脆弱性と養育環境の関連を調べた。 Wistar/stとSDの2系統のラットに対し、出生後7日目に24時間の母子分離を行い、母子分離後の母親の養育行動を観察した。離乳後、5週齢でプラスメイズテストを行った。 2 研究結果 SD系の母ラットは母子分離後、Ached-back nursingが減少したがWis/st系のラットでは母子分離後Arched-back nursingが逆に増加した。5週齢の仔ラットにplus mazeテストを行ったところ、SD系のラットでは、従来の報告どおりオープンアームの滞在時間が減少した。Wis/st系のラントではSD系とは逆にオプンアームの滞在時間が増加し不安感受性が低いことが示唆された。 なお、行動を決める遺伝子と脳内物質の研究は、将来養育環境の行動への影響を明らかにする上で必要であるため、本研究と並行して、ヒトで行動を決める遺伝的寄与率を決める研究を行い、脳内ストレス物質についての研究を進めた。 3 考察 母子分離ストレスの影響は、Wis/st系のラットでは、SD系のラットの場合とは逆の結果となった。SD系では、従来より、母子分離ストレスにより、成長後の学習能力の低下、不安の強さ、ストレス感受性の亢進が観察されていた。我々の観察結果は、バックグランドの遺伝的相違、あるいは母親の養育行動の違いによる可能性が高い。今回は、母親の養育行動の違いを行動観察により同定した。我々の結果は、劣悪な養育環境に一時的にさらされていても、親の養育行動によって、その影響がレスキューされる可能性があることを示したものと言える。また逆に、母ラットの養育行動の変化がストレス脆弱性を生み出す可能性が示唆された。しかしこの行動の基盤に遺伝的背景の違いが関与している可能性があり、今後の検討としたい。すなわち、同一の系統を用いArched-back nursingの多い群と少ない群で仔ラットの海馬、扁桃体、視床下部の遺伝子発現の差異を調べる必要がある。さらには、創薬につながるタンパク同定を行っていきたい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Ando, J.: "Genetic structure of Cloninger's seven-factor of temperament and character in the Japanese population"Journal of Personality. 70. 583-609 (2002)
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[Publications] Higuchi, S.: "Plasma orexin A is lower in patients with narcolepsy"Neuroscence Letters. 318. 61-64 (2002)
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[Publications] Kawashima, K.: "The estrogen-occupied estrogen receptor is functionally switched from a positive regulator to a negative regulator of cell proliferation by Insulin/Insulin-like growth fctor-1 : A cell context-specific antimitogenic action of estradiol on rat lactotorohs in culture"Endocrinology. 143. 2750-2758 (2002)
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[Publications] Ono, Y.: "Dimensions of temperament as vulnerability factors in depression"Molecular Psychiatry. 7. 948-953 (2002)
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[Publications] Suzuki, E.: "Antipsychotic, antidepressant, anxiolytic, and anticonvulsant drugs induce type II nitric oxide synthase mRNA in rat brain"Neuroscience Letters. 333. 217-219 (2002)
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[Publications] Horiuchia, J.: "Effects of prolactin-releasing peptide microinjection into the ventrolateral medulla on arterial pressure and sympathetic activity in rats"Brain Research. 958. 201-209 (2002)
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[Publications] Okuma, T.Kanba, S., Inoue, Y.: "Recent Advances in the Research of Affective Disorder in Japan"Elsevier Science. 280 (2002)