Research Abstract |
平成15年度 術後痛モデルにおける脊髄後角ニューロンの特性変化および吸入麻酔薬(ハロタン,イソフルラン)の影響(川真田)280〜380gのラットを用いて,ハロタン麻酔下に除脳,脊髄切断(T2レベル)を行い,人工呼吸下に腰部脊髄(L2〜L5)を露出し固定台上に静置した.タングステン電極を用いて,下肢に皮膚受容野を有する脊髄後角wide-dynamic-range (WDR)ニューロンの単一活動を導出した.受容野中心に対し,von Freyフィラメント,ブラシ,動脈クリップを用い,非侵害および侵害刺激を行い,活動電位の応答を記録した.次いで1.1%および2.2%ハロタン,1.4%および2.8%イソフルランを20分投与後,受容野中心の皮膚,皮下,筋膜,筋肉を1cm切開し,直ちにこれら麻酔薬の投与を中止した.一部のラットでは2.2%ハロタンあるいは2.8%イソフルランの投与を切開後30分まで継続し,その後投与を中止した.切開後30分,1時間,2時間の皮膚受容野の大きさ,非侵害・侵害性刺激に対するニューロンの応答を記録した. ハロタン,イソフルランはそれぞれ投与濃度依存性にWDRニューロン活動を抑制し,刺激に対する応答も減弱した.しかし投与中止後,各測定時間における刺激応答は増強し,この興奮性の増大の程度は麻酔投与を行わなかった群と差がなかった.また切開後,2時間目とコントロール時点での自発発射の差と受容野の増大面積,あるいは切開時の活動電位の発射頻度と受容野の増大面積には相関がなかった.よって,吸入麻酔薬は術中の痛覚刺激を脊髄レベルで抑制するものの,術後の痛覚過敏の出現は,脊髄ニューロンの抑制によっては影響を受けないことが考えられた. 術後痛モデルにおける脊髄後角ニューロンのin vivoパッチクランプ記録による解析(川真田) 280〜380gのラットを用いて,ウレタン(1.2mg/kg)の腹腔投与による麻酔下に,腰部脊髄(L2〜L5)を露出し固定台上に静置した.ガラス電極を用いて脊髄後角2層ニューロンをホールセルパッチクランプした.細胞内電位を-70mVに固定しEPSCを,0mVに固定してIPSCを記録し,非侵害・侵害性刺激で誘起されるこれらEPSC, IPSCを測定した.次いで皮膚受容野中心を1cm切開し,EPSCあるいはIPSCの変化を30分まで記録した.次いで,同様の刺激を行い,EPSC, IPSCを測定した.一部のニューロンでは静止膜電位下で細胞内電位変化を記録した. 切開により振幅の大きな頻度が激しいEPSCが惹起されたが,切開後は急激に減少し,30分後にはこれら振幅の大きなEPSCは0.2〜0.3Hzとなった.IPSCは切開時に増大したが,その後は増加をみなかった.
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