2002 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子STAT1とNF-κBによる炎症性遺伝子の発現調節機構の解析
Project/Area Number |
13470388
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
大森 喜弘 明海大学, 歯学部, 教授 (50194311)
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Keywords | 転写制御 / 遺伝子発現 / STAT1 / NF-κB / ケモカイン / サイトカイン / 転写共役因子 |
Research Abstract |
STAT1、NF-κBによる炎症性遺伝子の相乗的な発現誘導の分子機構の解明の一環として、これまでIFNγ、TNFαによって誘導されるヘルパー1型T細胞に対するケモカインMIG (Monikine induced by gamma IFN)遺伝子の転写制御機構について解析を行い、コアクチベーターCBPが関与していることを明らかにした。本年度の研究目的は、このコアクチベーターCBPがどのような分子機構によりSTAT1、NF-κBによる相乗的な転写活性を誘導するのか明らかにすることであった。本研究の結果、以下の知見が得られた。 1. IFNγによって誘導されるSTAT1とTNFαによって誘導されるNF-κBがCBPのどの領域を介して結合し、核内で複合体を形成しているか検討するためCBPのN末端、C末端欠損変異体ならびにSTAT1、NF-κBの発現ベクターをHEK293細胞に遺伝子導入し、免疫沈降後、SDS-PAGEを行い抗STAT1、抗NF-κB抗体を用いてウェスタンブロットを行った。その結果、IFNγによって誘導されるSTAT1は、CBPのC末端領域またTNFαによって誘導されるNF-κB (p65)は、N末端にそれぞれ結合していること見出した。また、共焦点レーザー顕微鏡により IFNγによってSTAT1が、またTNFαによってNF-κB(p65)が核内へ移行し、CBPと共存している知見を得た。 2.次にこのSTAT1、NF-κBとCBPとの複合体形成がMIG遺伝子の転写活性の増強に必要であるか検討するため、上記CBPのN末端、C末端欠損変異体の発現ベクターを遺伝子導入し、MIG遺伝子のルシフェラーゼレポーター遺伝子の転写活性に及ぼす影響について検討した。その結果、IFNγ、TNFαによって誘導されたレポーター遺伝子活性は、CBPのN末端、C末端欠損変異体の発現ベクターにおいて顕著に低下した。 3.STAT1、NF-κBならびにCBPが実際にMIG遺伝子のプロモーター上にリクルートされ、複合体を形成しているのか検討するためクロマチン免疫沈降法を用いて検討した。その結果、IFNγ、TNFαの共刺激でSTAT1、CBPがMIG遺伝子のプロモーター上へ相乗的にリクルートされた。また、RNAポリメラーゼIIのMIG遺伝子のプロモーター上へのリクルートもIFNγ、TNFαの共刺激で増加した。 以上の知見より、STAT1、NF-κBによるMIG遺伝子の転写活性の相乗的な増強は、IFNγ、TNFαによって誘導されるSTAT1、NF-κBが核内へ移行し、CBPの異なる領域へ同時に結合して安定した複合体を形成し、RNAポリメラーゼIIをMIG遺伝子のプロモーター上へリクルートすることにより誘導される可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)