2003 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子STAT1とNF-κBによる炎症性遺伝子の発現調節機構の解析
Project/Area Number |
13470388
|
Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
大森 喜弘 明海大学, 歯学部, 教授 (50194311)
|
Keywords | 遺伝子発現 / 癌細胞 / STAT1 / NF-κB / ケモカイン / Interferon-γ / MIG / CXCL9 / IP-10 / CXCL10 |
Research Abstract |
我々はこれまで、IFNγによって活性化される転写因子STAT1とTNF、LPSによって活性されるNF-κBがケモカインCXCL9遺伝子の相乗的な発現誘導に関与し、STAT1、NF-κBが核内におけるコアクチベーターCBPとの相互作用を介してRNAポリメラーゼIIをプロモーター上にリクルートすることを明らかにしてきた。IFNγ、LPSはSTAT1、NF-κBの活性化を誘導するだけでなく、MAP Kinaseなどのリン酸化酵素の活性化を誘導し、転写活性に影響を及ぼすことが知られている。そこで、本年度の研究課題ではまず、STAT1、NF-κBによる転写制御にMAP Kinaseが関与しているか検討した。すなわち、マクロファージ様細胞株RAW264.7においてIFNγ、LPSによって相乗的に誘導されるCXCL9遺伝子の発現にMAP Kinaseが関与しているか検討するため、p38、ERK1/ERK2 inhibitorの影響について検討した。その結果、p38 MAP kinase inhibitorは、IFNγ、LPSによって相乗的に誘導されるCXCL9遺伝子の発現、ならびにレポーター遺伝子活性を抑制した。一方、STAT1、NF-κBの核内移行、DNA結合活性は抑制しなかった。また、IFNγによるSTAT1依存性の転写活性にも影響は認められなかった。これらの結果は、p38 MAP kinaseがSTAT1の転写活性には影響せず、LPSによって活性化されるNF-κBの転写活性に関与していることが示唆された。 次に、STAT1、NF-κBによって相乗的に誘導されるケモカインCXCL9、CXCL10の生理的な意義を検討するため、癌細胞におけるこれらケモカイン遺伝子の発現誘導について検討した。その結果、IFNγ単独刺激により口腔扁平上皮癌細胞HSC-2では、CXCL9、CXCL10の発現が認められたが、歯肉癌由来細胞Ca9-22では認められなかった。そこで、IFNγによって誘導されるSTAT1の活性化を検討したところ両細胞ともにSTAT1の活性が認められ、STAT1依存性の転写活性も差異は認められなかった。CXCL9、CXCL10の発現には、NF-κBも関与していることから両細胞におけるNF-κBの動態について検討したところ、HSC-2細胞では非刺激状態で核内にRelAが検出され、構成的なNF-κBのDNA結合活性も検出できた。一方、Ca9-22細胞では、このようなNF-κBの活性化は認められなかった。この構成的なNF-κB活性がCXCL9、CXCL10の発現に必要であるか検討するため、ドミナント・ネガティブIκBα変異体をHSC-2細胞に導入し構成的なNF-κBの活性化を抑制した結果、IFNγによるケモカインの発現が顕著に抑制された。またCa9-22細胞をTNFαで刺激し、NF-κBを活性化したところ、IFNγによるケモカインの発現誘導が認められた。これらの結果は、IFNγによって誘導されるCXCL9、CXCL10遺伝子の発現には、構成的なNF-κBの活性化が必要でありSTAT1、NF-κBによる核内でのクロストークを介した相乗的な転写活性化により誘導されるものと考えられる。
|
Research Products
(1 results)