2002 Fiscal Year Annual Research Report
顎顔面部の疼痛認知ならびに疼痛感受性に関する国際比較研究
Project/Area Number |
13470413
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
矢谷 博文 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (80174530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 賢治 岡山大学, 歯学部附属病院, 講師 (20304313)
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Keywords | 性差 / 電流知覚閾値 / 三叉神経 / 正中神経 |
Research Abstract |
過去の疫学データから、慢性疼痛の有病者率は女性の方が高く、その理由の一つとして、女性の方が疼痛感受性が高いことがあげられている。そこで、本研究では健常者と慢性顔面痛患者の知覚閾値を比較し、その病態を明らかにする予備的検討として、まず健常者の三叉神経ならびに正中神経領域における神経選択的電流知覚閾値(CPT : Current Perception Threshold)を計測し、知覚閾値に性差が存在するかどうかを検討した。 1.CPT値測定の信頼性 ニューロメーターを用いた知覚閾値の測定結果の信頼性をtest-retest法により11名の健常被検者を用いて検討した。このニューロメーターは、被験者に痛みを与えることなく電流知覚閾(CPT)値を測定可能であり、特に3種類の周波数2000、250、5Hzの電気刺激を加えることにより、それぞれAβ、Aδ、C線維のCPTを測定できる.自動強制二重盲検法を用いた。測定部位は、左側外耳道前方約10mmの顔面皮膚(三叉神経領域)とし、午後4時以降に1時間の間隔を開け2回測定を行い,級内相関係数(ICC)を算出した。その結果2000、250、5Hzの電気刺激時のICCは,それぞれ0.62,0.80,0.86で,CPT値測定の信頼性はきわめて高いことが明らかとなった. 2.性差が知覚閾値測定結果に与える影響 被験者は、臨床診査ならびに問診により顎関節や顎顔面領域に疼痛が認められない健常者20名(男性10名、女性10名、平均年齢24.4±1.5歳)とし、静寂な部屋で仰臥位をとらせ、すべての測定は午後4時から6時の間にCPT値の測定を行った。測定部位は、左側外耳道前方約10mmの顔面皮膚(三叉神経領域)ならびに左側掌側母指指根部(正中神経領域)の2か所とした。その結果、周波数が高い刺激に対しては、周波数が低い刺激に対するよりもCPT値が高いこと、若干三叉神経領域のCPT値は正中神経領域のそれよりも低いことなどが明らかになった。一方、性差とCPT値との関係については、三叉神経領域の2000Hzの周波数においてのみ、女性の方が有意に低いCPT値を示すことが明らかになった。これは非症状者において、女性の方が触覚や圧覚に対する感覚がより鋭敏であることを示す一方、AδやC線維のような疼痛関連神経線維においては、感覚閾値の性差に及ぼす影響は無視しうる範囲であることを示している。
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Research Products
(2 results)