Research Abstract |
平成13年度は,ラット歯肉溝にリポポリサッカライドとプロテアーゼを塗布し,歯周炎モデルを確立した。平成14年度は,ラットの正常歯肉に機械的刺激を与え,歯肉細胞の増殖を促す条件を設定した。平成15年度は,平成13年度に確立した歯周炎モデルに対して,平成14年度に設定した条件で機械的刺激を与え,機械的に歯肉を刺激した方が未刺激の場合よりも歯周ポケットの形成が抑制されることが明らかになった。 これらの研究で,歯肉接合上皮や線維芽細胞の増殖活性が亢進されることをproliferating cell nuclear antigen (PCNA)陽性細胞の増加で評価したが,増殖活性が亢進しても細胞密度が増えていないことから,本年度はPCNAに加えてbromodeoxyuridine (BrdU)を用いて増殖の評価を行い,機械的刺激が細胞周期に及ぼす影響を評価した。 ラット45匹の左側上顎第一臼歯口蓋側歯肉に,小型電動歯ブラシで1日1回,10秒間,0.02Nの力で機械的刺激を与えた。右側同部歯肉を対照とした。1,3,7日後に15匹ずつを屠殺した。なお,屠殺の3時間前に,5-bromo-2'-deoxyuridineを25mg/kg体重の割合で腹腔内に投与した。還流固定,浸漬固定,脱灰,脱水およびパラフィン包埋を行った後,連続切片を作製した。そして,HE染色とPCNAおよびBrdUに対する免疫染色を行った。 接合上皮基底細胞においては,PCNAおよびBrdU陽性細胞数はともに,1,3,7日目と経時的に増加する傾向にあり,7日目に最大となった。刺激群のPCNAおよびBrdU陽性細胞数は,1,3,7日目に対照群よりも有意に多かった。細胞密度は,刺激群と対照群でほぼ同じ値を示した。 線維芽細胞については,刺激群のPCNAおよびBrdU陽性細胞数が,3日目に最も多く,1,3,7日目に対照群よりも有意に高い値を示した。細胞密度は,刺激群と対照群に有意な差はなかった。 以上の結果より,機械的刺激により,ラット歯肉の接合上皮基底細胞と線維芽細胞のPCNAおよびBrdU陽性細胞数が有意に増加し,機械的刺激が細胞のDNA合成を促進することが明らかになった。
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