Research Abstract |
今年度は本研究プロジェクト3年目の最後の年度であり,2年目の成果を引き継いだ研究を継続しつつも,本研究全体のまとめを行なった.その結果,次のような成果が得られた. 1)インターネットを介しての実時間遠隔添削通信方式の実装・改良・評価 2)各種稽古文字の美形自動評価関数の集約とKR的学習者インターフェース設計と評価 3)歴史的能書家文字の収集とその書家の標準お手本文字の基礎的研究 4)書道における連綿に関する調査および標準文字列お手本自動生成の基礎的研究 1)については,昨年度制作した遠隔実時間指導システム(RTD)について実際にインターネットを介して試用し,問題点を整理するとともに,未実装となっている音声・カーソルの同期機能やミニメモ機能等を実装した.現在のところ,通常の回線ではうまく使用することが可能で,師範からも利用価値について高い評価が得られているが,低速回線等においては,幾つかの問題点も残されている.また,RTDでは,実際の指導に入る前段階として,添削画像を用意する作業が必要である.添削画像は全体画像と個々の文字ごとの画像を用意するが,これは補助ソフトを用いた手作業となる.本初究ではの手動作業を,手書き文字認識の技術を用いて自動化する研究も行なった.RTDに必要な準備作業という位置づけでは,おおむね良好な自動化作業が実現できた. 2)については,過去2年間の成果をもとにして,特にペンの運びの自動評価方法について更に詳しい調査を行い,プログラムを実装を行なった.その結果,総合的に様々な角度から評価が行なえるようになり,実際に本ソフトを使用することによって,学習効果があることが検証できた.しかし,この成果を土台として,稽古方法や指導方法については更なる検討が必要であると思われる. 3)については昔の能書家と言われる書家が書いた,総合的に美しいと呼ばれる複数の文字を合成して,標準的お手本の詳細コンピュータにより自動生成する手法について検討し,実装した.昨年度までは,かすれ文字を対象とした合成や,文字の構造が複雑な文字について,うまく合成できないという問題点が幾つかあったが,本年度はそれを解決すると共に,筆の形を考慮にいれた,より良い合成結果を得ることができた. 4)については,次の研究への継続を考慮して,調査研究を行なった.3)によって,個々の文字の標準お手本を作るとは可能であるが,それらをなめらかな曲線で単純に繋げても,文字列としての標準お手本を作ることは困難である.本研究では,つづけ字の描き方に関する書道の基礎を調査し,得られた知識をもちいていかに標準的な文字列のお手本を自動生成するかを検討・実装した.現段階では,また多くの問題点が残されているが,現在師範されている毛筆フォントなどよりも良い文字画像が生成できている.
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