2002 Fiscal Year Annual Research Report
大気と北方森林生態系間におけるCO_2交換過程の解明,定量評価、およびモデル化
Project/Area Number |
13480150
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平野 高司 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20208838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町村 尚 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教授 (30190383)
鱧谷 憲 大阪府立大学, 大学院農学生命科学研究科, 講師 (30264815)
文字 信貴 大阪府立大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (20111982)
岡田 啓嗣 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (30333636)
高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助手 (20322844)
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Keywords | 北方森林生態系 / カラマツ林 / CO_2フラックス / トランクスペース / 土壌呼吸 / エネルギー収支 / ビッグリーフモデル / 貯熱変化 |
Research Abstract |
カラマツ林を対象とし,現地観測およびデータ解析を行なった。本年度は,渦相関システムを林床に設置し,トランクスペースにおけるCO_2・エネルギーフラックスの連続観測を開始した。また,森林のエネルギー収支を詳細に解析するために,森林空間における貯熱変化量の観測と評価を行なった。さらに,大気-森林間のCO_2・エネルギー交換過程のモデル化のために,ビッグリーフモデルの適用を試みた。本年度に得られた主な成果は,以下の通りである。 1)展葉初期には,林床に光がよく届き,低温で坪吸量が小さいため,林床植生の光合成が土壌呼吸量を上回り,昼間は林床がCO_2シンクとなった。一方,展葉の終わる6月初旬には昼間のCO_2交換量はほぼ0になり,7月下旬になると昼間でも正となった。これは林床の光強度が減少して林床植生の光合成が低下し,地温が上昇して土壌呼吸が上昇した結果である。 2)繁茂期には貯熱変化項の中で土壌表層の貯熱変化が最も大きく,次いで幹の貯熱変化が大きかった。これらが貯熱変化項の8割以上を占めた。落葉期には,繁茂期に比べ貯熱変化項は全体的に増加した。これは落葉のため,日射が樹幹や土壌などに直達したためと考えられる。そのため,日中平均の純放射量に占める貯熱変化項の割合は,繁茂期から落葉期にかけて5.4%から7.8%に上昇した。貯熱変作量を考慮することでエネルギー収支が改善された。 3)カラマツ林のCO_2・エネルギー交換過程を理解し,推定するためにビッグリーフモデルを適用した。その結果,顕熱フラックスは比較的精度良く推定できたが,潜熱フラックスは全体的に過小評価された。また正味CO_2交換量(NEE)は日中のモデルの再現性に問題が見られた。これらを改善するためには,遮断蒸発の影響をモデルに組み込むとともに,光強度と光合成の関係を再検討する必要がある。来年度は多層モデルを適用する予定である。
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