Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
文字 信貴 大阪府立大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20111982)
鱧谷 憲 大阪府立大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (30264815)
町村 尚 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30190383)
高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助手 (20322844)
岡田 啓嗣 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (30333636)
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Research Abstract |
北海道苫小牧市のカラマツ林を対象とし,現地観測およびデータの解析を行なった。本年度は主に,1)渦相関法を用いたキャノピー上,およびトランクスペースでのCO_2フラックスの連続観測,2)キャノピー層と林床(林床植生+土壌)のCO_2交換量の分離評価,を行うとともに,全体の取りまとめを行った。ここでは,キャノピー層と林床のCO_2交換量の分離評価の結果について報告する。 5月上旬は,キャノピーの展葉が十分でなく林床に光がよく届いたため,林床植生の光合成が活発に行われた。また,地温が低く土壌呼吸量が小さかった。そのため,林床植物の光合成量が土壌呼吸量を上回り,昼間は小さいながら林床がCO_2のシンクとなった。しかし,7月上旬になりキャノピーが閉じると林床植生の光合成が低下し,土壌呼吸量が光合成量を上回り,昼間でも林床はCO_2のソースとなった。11月は,落葉のため林床の光環境が改善されたが,下層植生の老化が進み光合成能力が低下したため,CO_2のシンクとはならなかった。キャノピーのCO_2吸収量のピークは6月で,林床のCO_2放出のピークは8月だった。森林全体のNEPが8月に大きく減少するのは,キャノピーからのCO_2放出量の増大が原因と考えられた。4月下旬〜11月の無積雪期間におけるCO_2収支についてみると,この期間にキャノピーが吸収したCO_2量の52%が林床から,48%が大気から供給された。また,森林全体の光合成量に対して,キャノピーと林床の寄与はそれぞれ93%,7%だった。また呼吸量に関しては,それぞれ21%,79%だった。このことは,キャノピーが吸収するCO_2の約半分が林床から供給され,林床植生と土壌が森林全体のCO_2収支に大きな影響を与えていることを示している。さらに,林床植生の光合成量は森林全体の光合成量の7%を占め,林床植生のCO_2固定量は無視できないことが明らかとなった。
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