2003 Fiscal Year Annual Research Report
氷河の雪氷中で増殖する微生物を利用したアイスコア解析に関する研究
Project/Area Number |
13480154
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Research Institution | TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
幸島 司郎 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教授 (60183802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 望 東京工業大学, 総合地球科学研究所, 助手 (30353452)
白岩 孝行 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (90235739)
牛田 一成 京都府立大学, 農学部, 助教授 (50183017)
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Keywords | アイスコア / 微生物 / 氷河 / 古環境 / 藻類 / バクテリア / 遺伝子解析 / 雪氷 |
Research Abstract |
1.雪氷中の微生物分析法の改良 雪氷微生物の群集構造を遺伝子分析によって解析する手法を開発することを目的に、北アルプス内臓助雪渓で雪氷試料を採取し(幸島)、試料中から藻類とバクテリアのDNAを抽出して分析を行った(牛田)。方法の改良を行った結果、これまで雪氷中の藻類DNAの抽出・増幅はバクテリアに較べて困難であったが、バクテリアとほぼ同様に抽出・増幅することが可能となった。現在、アラスカやヒマラヤの氷河試料を対象に、氷河生態系の藻類・バクテリア群集構造を、遺伝子解析によって行うべく、さらなる分析方法の改良を行っている。 2.雪氷微生物を利用したアイスコア解析法の検討 雪氷微生物を利用したアイスコア解析法を確立するために、アラスカのローガン山(白岩)、ロシアのアルタイ山脈(竹内)、ブータン・ヒマラヤ(幸島、牛田)、チリ・アンデス(幸島)などで採取したアイスコア及び雪氷微生物試料の分析を行った。その結果、いずれの地域のアイスコアにも雪氷藻類をはじめとする雪氷微生物が含まれており、年層境界指標としての利用など、アイスコア解析に利用可能であることが明らかとなった。特に、これら地域の氷河コアでは、低緯度、低標高などの条件のため、融解が激しく、従来の安定同位体指標や化学成分指標が融解水の影響で利用不可能であるのに対して、雪氷微生物は環境指標として有効であることが確認され、温暖な地域の氷河コア解における、雪氷微生物指標の重要性が明らかになった。 3.これまでの成果のとりまとめと発表 本研究の結果の一部を以下の3つの論文に取りまとめ、それぞれ国際誌に投稿した。(1)Estimation of net accumulation rate at a Patagonian glacier by ice core analyses using snow algae「パタゴニア氷原コア中の雪氷藻類解析による年涵養量推定」Global and Planetary Change(幸島、白岩、竹内).(2)Snow algae in a Himalayan ice core : new environmental markers for ice core analyses and their correlation with summer mass balance「ヒマラヤ氷河コア中の雪氷藻類:藻類バイオマスと夏涵養量との相関」Journal of Glaciology(幸島、竹内).(3)Seasonal change of bacterial flora and biomass in the mountain snow analyzed by 16S rDNA sequencing and Real-time PCR analyses「遺伝子解析による雪氷中のバクテリア相とバイオマスの季節変化解析」AEM(幸島,牛田).
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Shiraiwa, T., others: "Ice core drilling at King Col, Mount Logan 2002"Bulletin of Glaciological Reserch. 20. 57-63 (2003)
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[Publications] Shiraiwa, T., others: "Shallow ice-core drilling at Mount Wrangell, Alaska"Bulletin of Glaciological Reserch. 21. 71-77 (2004)
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[Publications] Inoue, R., Ushida K.: "Development of the intestinal microbiota in rats and its possible interations with the evolution of the luminal IgA in the intestine"FEMS Microbiology Ecology. 45(2). 147-153 (2003)
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[Publications] Yamada, T., Kohsima, S., others: "Outline of 2002-research on glaciers and glacier lakes in Lunana region, Bhutan Himalaya"Bulletin of Glaciological Reserch. 21. 79-90 (2004)
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[Publications] 幸島司郎: "雪と氷の世界の生物たち-雪氷圏の生物学"化学と生物. 41・9. 598-604 (2003)
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[Publications] 幸島司郎: "氷河生態系の生物たち"遺伝. 57・5. 31-35 (2003)