蛋白質の大規模構造変形ダイナミクスと機能発現

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13480217
• Research Institution: Nagoya University
• Principal Investigator: 笹井 理生 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (30178628)
• Keywords: 蛋白質立体構造 / フオールデイング / 機能発現 / エネルギーランドスケープ / 大規模構造変化 / 分子モーター / シグナル伝達 / 進化シミュレーション

Research Abstract

(1)生物学的な選択なら蛋白質はその機能によって選択される。こうした機能に関わる選択を蛋白質の粗視化モデルを用いて計算機でシミュレートした。計算機上の選択を通じて100〜200世代で得られた配列は、たいていの小規模なアミノ酸置換に対して機能や安定性を変えない(たいていの変異は中立変異である)、という自然の蛋白質に広く見られる鈍感さを持つ。また、選択過程における構造の発達過程は、選択後の配列のフォールディング過程と相似である、という分子レベルのevo-devo比較の意義を示すことができた。
(2)Photoactive Yellow Proteinは発色団を持つ蛋白質であるが、この蛋白質の光シグナル伝達における重要な状態が部分的にunfoldした状態であることが実験的に示されている。Munotzらがフォールディング研究のために開発した統計力学的モデルをさらに発展させ、エネルギーランドスケープの計算に適用し、光によって誘起されたunfolding-folding転移を合理的に説明することに成功した。光を吸収する色素のまわりの蛋白質の局所的な構造ゆらぎの増大が、色素と直接相互作用しないN末端部分のアンフォールディングを引き起こし、中間体の寿命をコントロールする、という描像を示すことに成功し、大規模構造変形を伴う、光緩和の新しいシナリオを提案することができた。

Research Products

• [Publications] M.Sasai: "Energy landscape picture of supercooled liquids : Application of a gene ralized random energy model"J.Chem.Phys. 118. 10651-10662 (2003)
• [Publications] M.Sasai, P.G.Wolynes: "Stochastic Gene Expression as a Many Body Problem"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 100. 2374-2379 (2003)
• [Publications] H.K.Nakamura, M.Sasai, M.Takano: "Squeezed exponential kinetics to describe a nonglassy downhill folding as observed"Proteins : Structure, Function, and Genetics. (印刷中).
• [Publications] H.K.Nakamura, M.Sasai, M.Takano: "Temperature dependent mechanisms for folding processes in a simple model of protein"Protein Science. 12. 192-192 (2003)
• [Publications] T.Ushikubo, W.Inoue, M.Sasai: "Dynamics of Repressilator : From Noise to Coherent Oscillation"Proceedings of the 14th International Conference on Genome In formatics. (印刷中).
• [Publications] S.I.Nishimura, M.Sasai: "Chemotaxis of an Eucaryotic Cell in Complex Gradients of Chemoattractants"Proceedings of the 9th International Symposium on Artificial Life and Robotics. (印刷中).
• [Publications] 伏見譲ほか9名: "生命の起源「物質の進化」から「生命の進化」へ"丸善. 148 (2004)