2002 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣摘出ラット痛覚過敏の発現機序-In vivoパッチクランプ法による解析-
Project/Area Number |
13480276
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 恵 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10140641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 彰敏 旭化成株式会社, ライフサイエンス総合研究所, 研究員
古江 秀昌 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (20304884)
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Keywords | 卵巣摘出 / 骨粗鬆症 / 痛覚過敏 / 脊髄後角 / in vivoパッチクランプ法 / カルシトニン / セロトニン / C線維 |
Research Abstract |
閉経後によく見られる腰痛などの慢性痛には、微細骨折などの関与が考えられていたが、カルシトニン製剤が骨量を回復する前に鎮痛作用を示すことから、その痛みの発生とカルシトニン製剤の鎮痛作用には別の機序が示唆されていた。そこで、骨粗鬆症のモデルである卵巣摘出(OVX)ラットを用い、OVXラットにみられる痛覚過敏の発生機序とカルシトニン製剤の鎮痛機序をin vivoパッチクランプ記録法を用いて検討した。スライス標本を用いた結果から、OVXラットではC線維終末に発現するセロトニン受容体が減少することが示唆されたので、皮膚への触および痛み刺激によって誘起されるシナプス応答に対するセロトニンの作用を検討した。皮膚に触および痛み刺激を加えると、正常ラットではその応答の振幅には有意差がみられなかったが、OVXラットでは痛み刺激による応答は触刺激のそれより有意に振幅が大きかった。これは痛みを伝えるC線維終末のセロトニン受容体が減少したため、グルタミン酸放出の抑制が消失したためと考えられた。次に、セロトニンを脊髄表面に投与すると、正常ラットではどちらの応答も同様に抑制されたが、モデルラットでは、触応答は減少したが痛み応答の抑制はわずかであった。これらの結果を基に、OVXラットにカルシトニンを3週間以上投与した標本を用いて同様の検討を行った。カルシトニン投与ラットでは、正常ラットと同様に痛み応答と触応答に有意な違いはみられなくなった。また、セロトニンを投与すると痛みおよび触応答は同じ程度に抑制された。以上の結果から、OVXラットでは痛みを伝えるC線維の終末に発現しているセロトニン受容体が減少し、グルタミン酸放出の増大が起こり痛覚過敏を引き起こしていること、また、カルシトニン製剤を前もって投与したラットでは、再びセロトニン受容体発現が回復し鎮痛作用を示したものと考えられた。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] Nakatuska T et al.: "Activation of central terminal VR1 receptors and αβATP-sensitive P2x receptors reveals a converged synaptic activity onto the deep dorsal horn neurons of the spinal cord"Journal of Neuroscience. 22/4. 1228-1237 (2002)
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[Publications] Luo C et al.: "Anandamide inhibits excitatory transmission to rat substantia gelatinosa neurons in a manner different from that of capsaicin"Neuroscience Letters. 321. 17-20 (2002)
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[Publications] Matsumoto N et al.: "GABA-mediated inhibition of glutamate release during ischemia in substantia gelatinosa of the adult rat"Journal of Neurophysiology. (in press). (2003)
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[Publications] Kawasaki Y et al.: "α2 adrenoceptor-mediated presynaptic inhibition of primary-afferent glutamatergic transmission in rat substantia gelatinosa neurons"Anesthesiology. (in press). (2003)
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[Publications] Yang K et al.: "Pre-and postsynaptic inhibition mediated by GABA receptors in rat vebntrolateral periaqueductal gray neurons"Buochemical and Biophysical research Communications. (in press). (2003)
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[Publications] 吉村 恵 et al.: "骨粗鬆症の痛みの発生とカルシトニンによる静痛作用"Clinical Calcium. 11・9. 1153-1157 (2002)
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[Publications] 伊藤 彰敏 et al.: "OVXラットにおけるエルカトニンの抗侵害受容(鎮痛作用)-エストロゲンとの比較-"Osteoporosis Japan. 10・2. 227-229 (2002)
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[Publications] 吉村 恵 et al.: "痛覚受容イオンチャンネル-痛み刺激のコーディングとイオンチャンネル-"医学のあゆみ. 201・13. 1171-1175 (2002)
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[Publications] 吉村 恵 et al.: "脊髄痛覚伝達系の可塑性-慢性炎症による痛覚過敏の発生機序-"医学のあゆみ. 203・1. 21-24 (2002)
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[Publications] 吉村 恵 et al.: "下行性痛覚抑制系とその可塑性"Clinical Neuroscience別冊. 20・10. 1122-1125 (2002)
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[Publications] 吉村 恵 et al.: "脊髄スライスおよびin vivoパッチクランプ法を用いた脊髄後角における痛覚伝達系の機能解析"麻酔. 51. 79-88 (2002)
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[Publications] Lao L-J et al.: "Cellular mechanisms for the inhibition by adenosine of pain transmission in the spinal dorsal horn"Pain Research. 17・2. 63-68 (2002)
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[Publications] 吉村 恵 et al.: "痛みの脊髄機構"痛みと臨床. 2・3. 353-355 (2002)
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[Publications] 吉村 恵 et al.: "脊髄後角の可塑性と痛み"脳21. 6・1. 42-47 (2003)
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[Publications] 古江 秀昌 et al.: "脳機能の解明-生命科学の主潮流-"ガイア出版会. 570 (2002)
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[Publications] 片渕 俊彦 et al.: "脳機能の解明-生命科学の主潮流-"ガイア出版会. 570 (2002)