2003 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚組織で発現する遺伝子の比較からみたヒトとチンパンジーの違いの研究
Project/Area Number |
13554035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平井 百樹 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (60156635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
数籐 由美子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (70313202)
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Keywords | チンパンジー / 皮膚 / cDNA / SNP |
Research Abstract |
チンパンジーのゲノム配列概要がすでに公開され、比較ゲノム学は一段と進展してきた。しかし、ゲノム配列だけからエキソン-イントロン構造を予測することは困難である。そこで、転写・発現しているRNAの配列を逆転写によって保存できるcDNAライブラリーを作製し、その配列を分析することは有効な手法である。本研究では、自然死したチンパンジー(Pan troglodytes verus)につき、皮膚組織ならびに脳の試料を得て完全長cDNAライブラリーを作製した。これらのcDNAライブラリーからランダムに単離したクローンについて、5'端からのシークエンシングを行い、遺伝子の上流14,004配列を得た。その結果、9,131配列(3,332種類)がヒト遺伝子(RefSeq mRNA)と高い相同性を持つことがわかった。遺伝子の種類数としては、脳組織から2,658、皮膚組織から1,166が同定されたが、両組織で重複するものは505だけであった。このことから、かなりの割合で遺伝子が組織特異的に発現している可能性が示唆される。個々の遺伝子でみてみると、全体ではtubulin、eukaryotie elongation factorなどが多い。脳由来のクローンからはdyneinやsynaptosomal-associated proteinが、皮膚由来のクローンではkeratin類が多く得られ、組織特異的なスペクトルがみられた。そこで特に皮膚で多くのクローンが得られたkeratin遺伝子群に注目し、全長シークエンスを読みヒトの相同遺伝子と比較解析した。これらの解析結果から、塩基置換だけでなく、種間で配列の挿入・欠失(indel)が検出できた。非翻訳領域における1〜2塩基のindelが大部分であったが、翻訳領域でのチンパンジーに大きな挿入がある例も見つかった。なお、これらはすべてアミノ酸の挿入に対応した。またcDNAにおけるSNP(cSNP)についても調べた。チンパンジー遺伝子配列で見つかったSNPについては、ヒトでの相同部位での対応は確認できなかった。したがって、これらのSNPは両種が分岐した後、種内で独自に広がっていったものがほとんどであろうと推察される。以上の結果にもとづき、今後のマイクロアレーによる両種間の遺伝子発現解析の基盤ができた。 本研究で得られた成果については、現在公開中の"PRIGEN-Primate Genes"(http://www.prigen.org/)のコンテンツとして、順次追加して公開していく計画である。チンパンジーの226遺伝子のコンセンサス配列を作製するもととなった1,947クローンの配列については、DDBJに登録をおこなった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Sakate, R.: "Analysis of 5' -end sequences of chimpanzee cDNAs"Genome Research. 13・5. 1022-1026 (2003)
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[Publications] Suto, Y.: "Gene arrangement at the Rhesus blood group locus of chimpanzees detected by fiber-FISH"Cytogenet.Genome Research. 101・1. 161-165 (2003)
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[Publications] 坂手龍一: "ヒトとチンパンジー:遺伝子構成の異同を探る"バイオインダストリーとサイエンス. 61・12. 11-16 (2003)